警察官から上場企業経営者に転身 店舗数業界1位の高齢者向け配食チェーン運営

シルバーライフ(東京都新宿区)


清水貴久 社長(44)

1974年7月31日生まれ。1998年4月警視庁入庁。1999年9月ベンチャーリンク入社。2002年2月マーケット・イン設立、代表取締役。2009年9月シルバーライフ入社、FC開発部長。2012年9月シルバーライフ代表取締役社長に就任(現任)。

高齢者向け配食サービスのフランチャイズ運営を手掛けるのがシルバーライフ(東京都新宿区)だ。2007年の創業以来、右肩上がりで業績を拡大し、18年4月現在で業界トップの614店舗を展開する。元警察官からフランチャイズビジネスに転身した異色の経歴を持つ清水貴久社長に聞いた。


市場の成長に可能性を感じ自らFC店運営


 シルバーライフは、一人暮らしや、日々の買い物に出掛けるのが困難な高齢者に食事を届ける配食事業を「まごころ弁当」「配食のふれ愛」という屋号でフランチャイズ展開している。2007年の創業以来、店舗数は拡大を続けており、現在は「まごころ弁当」では382店舗、「配食のふれ愛」には232店舗が加盟する。17年10月に東証マザーズに上場。18年7月期の売上高は前年比17.9%増の61億8400万円、営業利益は同12.0%増の5億3200万円を見込む。


 店舗数業界1位のチェーンを率いる清水社長は、元々はビジネスとは無縁ともいえる警察官の出身だ。やむない事情で退官後、フランチャイズ加盟店開発事業を行うベンチャーリンク(当時)に入社。焼肉の牛角などさまざまなFC本部のサポートに携わる中で、営業先として出会った高齢者向け配食サービス事業に成長の可能性を感じ、大手宅配チェーンが運営するフランチャイズに加盟して自らFC店を運営した。


 当時できて間もない配食事業を経営コンサルタントの目で見ると、食材の作り込みができておらず、営業手法も確立していなかったが、にもかかわらず成長していることにマーケットの強さを感じた、という清水社長。自らバイクで弁当を配達し、同チェーン300店舗中の売上1位と2位の店を作り上げた。


 「加盟店の平均月商100万円くらいだった当時、私の店は月商2000万円以上に達していました。とはいえ当たり前の営業をしただけで、例えば営業先のリストを作る、事前に開業DMを出しておく、そうすると初回訪問の時に、次の試食のアポイントを獲得しやすくなる、などといったこと。マーケットが良すぎたので、他業界がやっていることをやっていなくても伸びていた業界でした」


 その後、1つの転機が訪れる。清水社長の店で働いていたアルバイトが飛び出し、2007年にシルバーライフを創業。09年に清水社長もFC開発部長として入社し、店舗網を100店に拡大させた。ところが、その元アルバイトの社長から、「これ以上の拡大はリスクが大きい。社長を代わってほしい」と依頼され、思いがけなく社長に就任することになる。


 「元々、私は世の中のために生きるんだ、と思って警官になり、ビジネスに身を投じてからも基本は同じ。100店舗で社長就任の機会が訪れ、300店舗ぐらいになった5年前には、公私を越えたビジネスとしての上場を考えました。段階を経ながら、今の成長につながっていると感じています」


加盟金、ロイヤリティーゼロの低コスト開業で拡大


 全国に短期間で加盟店を広げた同社の出展戦略には特徴がある。それは「低コスト開業」だ。加盟金、ロイヤリティーはすべてゼロ、月々の会費が3万円の「ゼロプラン」を用意し、加盟の条件を低く設定している。また、調理済み食材を盛り付け、配送するだけの簡単なオペレーションであるため、一人でスタートできる。実際に脱サラの30~50代男性の加盟が多く、年平均の店舗継続率も9割を超えている。


 「蛇口を無料で配って、後で水を売って儲けよう、の戦略がうまくハマりました。加盟店さんには食材を本部から買っていただくので、加盟店さんの売上が伸びれば、当社の売上も伸びるシステム。開業資金としては、飲食店の営業許可が取れる店舗を設置するための約200~300万円と、損益分岐点である6・6カ月までの生活費が必要」


 高齢者向けの配食サービスを手掛ける企業が数ある中で、同社の強みは、1食だけでも配達すること、そしてメニューの豊富さと手頃な価格にある。高齢者が食べやすい大きさや柔らかさ、味付け、栄養バランスを考慮し、毎日食べても飽きない日常食を1000品目用意。売れ筋の普通食(おかずのみ)450円(税別・送料込み)という低価格で提供している。


 これを実現しているのが、群馬にある自社の食品工場だ。配食に特化した冷蔵(チルド)食材が製造可能なラインを有し、多品種多生産が可能なフレキシブルな生産体制を強みとしている。


 「ある同業他社さんは、食材を冷凍で保管していますが、日本の場合、冷凍倉庫代が高く付くので、原価割れをしないためには冷凍惣菜だと250品目ぐらいが限界です。ただ、この品目数だとメニューが3~4週間で一回りしてしまうので、お客様に飽きられてしまう可能性があります。一方、当社では、最初から倉庫は持たず、工場で冷蔵食材を毎日作って店舗に流しているので、1000品目という多様な品目の製造が可能です」


 さらに、同社の冷蔵食材パックは製造から1週間近く保存できるため、FC店舗への配送が週2~3回で済み、配送コストを抑えて原価を下げることができるという。


介護保険に依存しない 高齢者向け配食市場は今後も拡大


 75歳以上の後期高齢者人口は2016年現在では約1700万人。内閣府の高齢者白書によると、2025年には約2200万人、2055年には約2400万人まで増え続ける見通し。


 高齢者人口の増加に比例して配食市場も拡大。市場規模は2016年の1190億円から、2020年には1470億円への拡大が見込まれている。


 「高齢者向けサービスは医療や介護保険に依存するものが多いですが、配食はこれに左右されずに成り立つシルバービジネス。配食サービスのような事業こそが、激増する高齢者の生活を支えていくと考えています」


 同社は、市場の成長を背景に、10年後の売上高150~250億円、店舗数は10~15年で1500店舗達成を目指す。また、生産ラインやFC網を活用した事業を拡大していく。


 「成長マーケットには他社さんも参入したいはずですが、ノウハウがない。当社の工場でのOEM生産や、配送網を使って他社さんのお弁当や薬を配るなど、配食サービスにおけるプラットフォーム的な役割も担っていきたい」


 アジアでは日本に次いで韓国、台湾でも高齢化が進んでいる。1加盟店からスタートし、上場を果たした清水社長は、20~30年後におけるアジアでの高齢者向け配食サービスの展望も描いている。

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