脱・居酒屋に向けフード業態のFC化を加速 民間の立場から高齢者の起業を促進/ワタミ 渡邉 美樹 会長

ワタミ

(東京都大田区)

渡邉 美樹 会長

コロナショックの影響を最も受けた業界と言っても過言ではない外食産業。大手各社で身動きが取れづらくなる中、宅配食の無料提供や人材派遣会社の設立など、矢継ぎ早に施策を打ち出しているのがワタミだ。その背景にあるのは、昨年政界から会長職に復帰した創業者、渡邉美樹氏の存在が大きい。そんな渡邉氏が陣頭指揮を執って注力しているのが、フランチャイズ展開による出店だ。

(※2020年8月号「Top Interview」より)

渡邉 美樹 会長(60)

Profile わたなべ・みき

ワタミグループ創業者。「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」という理念のもと、外食・介護・宅食・農業・環境などの事業を展開し、「独自の6次産業モデル」を構築。2011年6月より、岩手県陸前高田市参与(震災復興支援)に就任。2013年、参議院選挙(全国比例区)において当選。財政再建と脱原発をはじめ、6年間、経営者の視点で政策提言を続け、「外交防衛委員長」も経験する。2019年7月、参議院議員を退任し、ワタミ取締役ファウンダーに就任。2019年10月、ワタミ株式会社代表取締役会長兼グループCEOとして、本格的に経営復帰する。

──新型コロナウイルスの影響で、外食各社が苦戦を強いられています。ワタミでも営業自粛期間中は、国内の直営400店舗を休業し、5月27日には65店舗の閉店も発表しました。こうした状況下、今後の店舗経営をどのようにしていこうと考えていますか。

渡邉 今年の2月から業績に影響が出始め、4月に関しては前年同月比96・5%のマイナスとなりました。しかし直近では、様々な規制が徐々に緩和されていく中で、国内では320店舗(直営220店舗・FC100店舗)が営業を再開しています。海外でも営業形態や営業時間の変更をした上で、店舗を再開しました。ただし今後の新規出店については、今我々がやっていること、つまり、それまでと同じ業態でやるのは止めようと考えています。

これからは2つの点で時代が大きく変わると思っています。一つが居酒屋業態そのものが難しくなるということ。新しいスタイルにおいては、「対面は止めましょう」とか「大皿は止めましょう」「お酌は止めましょう」というように、結果的に居酒屋自体を止めましょうという流れになります。ですからまずは、居酒屋ではない業態に早く切り替えていこうと考えています。

──居酒屋以外の業態とは。

渡邉 6月11日に発表した焼肉食べ放題の「上村牧場」を始め、「から揚げの天才」、ほかにもテイクアウトやデリバリーを強化した業態を考えています。もちろん、我々の祖業である居酒屋は守っていきますが、居酒屋以外の業態をしっかりとした柱として作っていかなければならないと思っています。

──2つ目の流れというのは。


渡邉 居酒屋そのものにおいて、売上が6割から7割しか戻らないだろうと想定しています。現在の中国の状況を見ても分かるように、モールが復活しても大体6割くらいしかお客が戻ってこないわけです。そしてこれには2つの理由があると思っています。一つはやはりコロナに対しての心配がまだあるということ。恐らくこれは半年から1年は続くと思います。

そしてもう一つは、世の中の人たちの所得がコロナの影響で減っている部分です。これは結果として、不要不急ではないものに対して、あまり消費ができないということになります。そうなるとどの企業でもそうであるように、売上が6割や7割で利益なんて出るわけがありません。むしろ損益分岐点を割り込みますので、赤字になるわけです。ですから、売上が7割の状態でも赤字にならない業態を磨き上げ、もう一回作り直すことを柱にしていきたいと思っています。

──渡邉会長は昨年まで参議院議員としての活動も行っていました。議員としての活動を踏まえて、この状況をどのように変えていけると思っていますか。

渡邉 私は議員時代の頃から、高齢者の第二の人生を応援することを繰り返し提案してきました。それは70歳でもしっかりお金を稼いでいなければ、年金に頼れない時代が来ることが分かっていたからです。しかし現状は、退職金をどう使っていいか、また老後や第二の人生をどうしていいか分からない状況です。

要するに起業ということ、特に高齢者の起業に対して応援する体制がありません。ですから私はずっと繰り返し、商工会や商工会議所を通じてバックアップをし、高齢者の起業を促すことを行ってきました。しかし、それに対して国は非常に柔軟ではなかった。

──どこに問題があったのでしょうか。

渡邉 商工会・商工会議所というのは、元々インキュベーターとかアントレプレナーを応援する仕組みを持っているのですが、そこにノウハウがないのです。なぜかというと、元々商工会・商工会議所というのは記帳が主です。つまり税金をどう払うかとか、どうやって補助金をもらうかということのサポート機関なのです。ですから経済が右肩上がりの時はそれで良いのですが、右肩下がりの社会になった場合には対応できない。つまり、新しい商工会・商工会議所の形が必要なのです。

──新しい商工会・商工会議所の形とは。


渡邉 中小企業の方々が今求めているのは、「売上の上げ方」です。だからこっちにシフトした新しい商工会・商工会議所の必要性を6年間提言し続けましたが、その体制は変わりませんでした。経営指導員なんて名前はありますが、経営指導はしていません。帳簿の付け方と補助金のもらい方しか教えていないわけですから。

私は経営指導員というのは、本当に売上を上げられるのが経営指導員だということで、経営大学院も含めて提案もしたのですが、実際には通りませんでした。

──商工会・商工会議所が硬直化していたということですね。


渡邉 そういう時代の変化とともに、自分たちの努力の方向性を変えようという姿勢が見られなかった。私は商工会・商工会議所のお抱え議員と一番ぶつかりました。「あなたたち、変わらなきゃだめだ!」と。しかし変えられない。

それはなぜかというと、商工会・商工会議所の要職は地元の名士で高齢な方がなっていることが多いのですが、そこで組織を変革しようとするとその議員は落選してしまう。だから今まで通りやっており、議員も分かっているけど変えられない。そういう非常に悪い循環の中に入り込んでしまっています。


鶏の仕入れ力を生かしたから揚げ業態

共同パートナーはテリー伊藤氏

 議員時代に叶えられなかった願望を果たすべく、昨年、自身が創業したワタミに復帰した渡邉会長。高齢者の起業を促すべく開発したブランドが、「から揚げの天才」だった。脱・居酒屋を図る意味も大きいが、同ブランドはほかのワタミの飲食ブランドと異なり、初出店から1年強でフランチャイズ展開も開始した。


──昨年政界を引退し、自身で創業したワタミの会長職に就任しました。まず始めに着手したのが、FCブランドの構築です。


▲「からたまボックス」は、690円で 販売

渡邉 高齢者の方が安心して第二の人生を歩めるような低資本のフランチャイズを行うことが、社会に対して大きく貢献できるのではないかと思ったわけです。ただ前提として、フランチャイズというものはリスクが少ないものでなければならないと思っています。開業から5年で、7割から8割の個人商店が潰れると言われる中で、まずは潰れない業態を作らなければならない。フランチャイズに関しても、そのために加盟店の方たちがフィーを支払うわけですから、フィーに見合ったノウハウなど、何かなければいけないわけです。

じゃあそうなった時に何がワタミのフィーとして相応しいかというと、一番は鶏肉です。なぜかというと、「ミライザカ」も「三代目 鳥メロ」も、鶏を使う量が半端ではない。つまりワタミという規模を用いれば、鶏の仕入れ力がすごく強いのです。個人商店が100円で仕入れるところを、当社は60円で仕入れられる。この差がロイヤリティフィーになっているのです。


──グループの仕れ力を使い、価格面で強みが出せるということですね。


渡邉  それともう一つが生産性です。たとえばオペレーションであれば、3名で運営していたところを2名で行う。また厨房の設計から機器の開発などというのは、外食のノウハウのある我々にしかできないと思っています。この仕入れと生産性の2点から考えた時に、最初に考えたのがから揚げでした。

から揚げはマーケットも大きい。子どもがおかずで何が一番好きかと言ったら、一番はから揚げなんです。そして二番が玉子焼きなんです。じゃあ玉子焼きも乗せてみようと。

──から揚げの天才は、タレントのテリー伊藤氏が共同パートナーとなっていますが、テリー伊藤氏の実家は有名な玉子焼き屋さんでもあります。その関係で玉子焼きを出しているのだと思っていました。


渡邉 テリー伊藤さんとはずっとラジオ番組で一緒なのですが、以前から「俺も商売やってみたい」という話を伺っていました。それで当社がから揚げの業態を始めるときに、「そういえばテリーさん、玉子焼きじゃん」と(笑)。しかもその時、テリー伊藤さんは68歳だったので、まさしく私が想定していた起業のシンボルでもあったのです。

──初出店は2018年の11月ですが、今年の2月にフランチャイズ店を出店して以降、急速に店舗数を増やしています。


渡邉 昨年末の時点では直営4店舗しかありませんでしたが、今年3月末時点でプラス2店舗、4月にはプラス1店舗、直近の6月だけで11店、7月も13店の出店が決まっている状態です。昨年一年間は、立地や商品など様々な実験を行いました。やはりフランチャイズは成功しなければならないわけですからね。

──3月に「カラオケまねきねこ」(以下:まねきねこ)を展開するコシダカ(東京都港区)がフランチャイズ契約を締結し、4月に店舗もオープンしています。


渡邉 お陰様で加須店も初月から当初の計画値を大きく上回る売上が出ており、今後も6〜7月だけで8店舗を出店する計画です。コシダカさんの場合、出店形態はまねきねことの併設店舗で、メーンの売上はから揚げの天才のから揚げを、まねきねこに運ぶというもの。そしてプラスアルファとして、外から買いに来てくれる方の売上というイメージでした。

ただ現状、カラオケ店の多くが休業している状態でありながら、これだけの売上が出ているので、先方も驚かれています。コシダカさんは郊外店で300店舗展開していますので、当社としても郊外店に順次出店してもらおうと思っています。

圧倒的なコスパ


──テイクアウトを行うから揚げチェーンは、いくつか存在しています。一般的に100gで240円の相場が多い中、から揚げの天才は60g99円と、金額面で優位性を打ち出しています。


渡邉 実は私はそれまで、から揚げ屋の存在は本当に知りませんでした。後々部下と街を歩いていた時に、「あっ、ここもから揚げ屋だな」「そうですよ、知らなかったんですか」と言われるくらい、全然意識していませんでした。ただこの業態を始める前に、当社のテストキッチンで40~65gまでのから揚げを5g単位で作らせて、これなら安いと自分で感じられるまで検証しました。

和民の時もそうでしたが、自分がお客様でも、「あっ、これは安い」という驚きと感動を実感できる。そしてそれしか出さない。だから別に他社と比較してどうかというのではなく、これで99円だったら私なら買うと。その基準で選んだだけです。お客様目線というのはずっと失いたくないです。これなら売れるとか、これなら他社よりいいとかというのは、ニセモノですよ。


▲今年1月にオープンした三軒茶屋店

──出店立地についても、同業他社が比較的繁華街の一等立地に出店するのに対して、から揚げの天才は商店街立地が多いように見えますが。


渡邉 都心部の出店に関しては、いわゆる商店街立地になります。昼夜の店舗前の通行量、そして半径500m以内の人口数が重要な指標になりますが、あとは「街の空気」。これはすごく大事だと思います。お母さんが「今日はちょっとおかずが少ないなぁ」と思って、買い物のついでにから揚げを2個買っていく。その200円分があることで、その日の夕食が豊かになって子どもが笑顔になる。そういう場面に見合うような方が周りにたくさん住んでいるエリア、やっぱり家族が多いところですね。

──生活動線上に店舗を構えることで、リピーターも付きやすくなりますね。


渡邉 いつも思い出してもらえる存在でなければならないと思うのです。そのためにも今後は3カ月に1回、「季節のから揚げ」ということで新しい季節メニューも提供していきます。また既に出店している加須店で勉強になったのが、スマートフォンのモバイルオーダーの存在ですね。お客様のデータも得つつ、情報発信もできるので、お客様の囲い込みには有効だと思っています。

──初期投資や収益モデルについて教えてください。


渡邉 物件の立地によって取得費や保証金などは異なりますが、一つの目安として2000万円になります。想定月商は500万円で営業利益は100万円のモデルですが、実際にこれまで出店している店舗の平均月商は600万円以上となっています。

また売上内訳としては、持ち帰りが9割で店内飲食が1割。どうしても帰りに軽く一杯飲みたいという人に向けて、ハイボールを199円で提供し、店内でも飲食できるような店づくりにしています。

──加盟対象は個人・法人問わないということですが、未経験者でもできるものなのでしょうか。


渡邉 から揚げ自体は揚げるだけなので、そこまで難しいものではありません。玉子焼きは、テリー伊藤さんに味の確認だけはしてもらうようにしていますが、専用の玉子焼き機器を作りましたので、オペレーションに添って作っていただければ大丈夫です。

また開業前に研修も行っており、本部研修と直営店体験をそれぞれ5日間、引き渡し後にオープン前研修を4日間、オープン日・オープン後のフォローで5日間を用意しています。店舗運営に必要な人員も平常時で2名、ピーク時でも3名と少人数で運営できるので、立ち上げやすいモデルともいえます。

──出店計画については。


渡邉 今年は最低でも30店舗を出店し、来年末までに100店舗、将来的には300店舗を一つの目安にしています。新しい立地であったり、どうしても必要な場所だけは直営店で出店し、あとは基本的にフランチャイズ店で展開していく予定です。

──昨年11月に発表した中期経営計画には、から揚げの天才を皮切りに、オリーブキッチンやラーメンにぼ助、めんこやや鳥メロといったフードブランドも、今後1年間で段階的にフランチャイズ化していく記載がありました。


渡邉 ワタミグループとして、今後はフランチャイズのパッケージを次々と作っていきたいと思っています。その結果として、「ワタミに来れば何かいいフランチャイズがある」という状態にしていきたい。やっぱり事業のスタートというのは、分からないことばかりなんです。ちょっと家で美味しいものができるからやってみようと言って、皆失敗しているわけです。

ですから私がつぼ八で学んで事業を興したように、そこはフランチャイズパッケージを学ぶことで次のステップに進んでもらう。そういった意味では、起業家を育成するようなことをやらせてもらいたいと思っています。

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