経営手法を大幅転換し、会社の窮地から脱却逆風下のカー用品市場で業界1位を追撃/イエローハット/堀江 康生 社長【後編】  

最終更新: 4月27日


イエローハット

東京都千代田区

堀江 康生 社長(69)


イエローハットの2015年3月期の営業利益は74億円、それまで大きく水をあけられていたオートバックスセブンを上回った。そんな同社の部門別売上を見ると、卸売が549億円に対して、小売が624億円。以降、年々その差は広がり、2020年3月期は卸売が491億円に対して、小売が824億円となっている会社の再建を見事成功させた〝堀江流〞経営術を聞いた。(※2021年6月号「Top Interview」より)

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堀江 康生 社長(69)

Profileほりえ・やすお

1952年1月生まれ、京都市出身。74年に京都工芸繊維大学を卒業後、76年に(株)ローヤル(現:(株)イエローハット)に入社。名古屋支店、仙台営業所、本社勤務を経て、97年6月に取締役営業管理部長に就任。その後、01年6月に常務取締役常務執行役員、08年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。趣味はねこグッズ収集、料理、スクラップブッキングなど多岐にわたる。


イエローハットの2015年3月期の営業利益は74億円、それまで大きく水をあけられていたオートバックスセブンを上回った。そんな同社の部門別売上を見ると、卸売が549億円に対して、小売が624億円。以降、年々その差は広がり、2020年3月期は卸売が491億円に対して、小売が824億円となっている。

16年に小売の売上が逆転 卸売の再強化も行い全体を底上げ


――御社の販売形態は大きく3つ。カーショップやホームセンターに対する卸売と、イエローハット加盟店に向けた卸売、そして自社子会社を経由しての小売です。元々はカーショップやホームセンターへの卸売の割合が高かったと思いますが、2016年3月期には小売の売上が逆転しています。


堀江 卸売については初代の頃から徐々に引いていき、先代(3代目)の頃には一旦ホームセンターへの卸売を止めました。初代の頃はイエローハット自体の販売の調子があまりにも良すぎたという理由でしたが、先代の頃は加盟店に卸す方が効率が良くなったためです。当社の1店舗当たりの年商は約2億4000万円で、そのうち技術系の仕事や工賃などのサービス売上を除いた納入(卸)売上率は約60%。つまり1億4400万円ほどが商品として納入されています。しかしホームセンターだと5000万円いけばいい方で、3000万円とかもある。その割に人を手伝いに寄越せだの棚卸に来いなど、ウダウダ言われてやるのが馬鹿馬鹿しいから止めたんです。


――ただ御社の基本方針の中には「卸売事業の強化」という文言があります。


堀江 ホームセンターへの卸売事業は一旦止めましたが、私が社長になってから復活したのです。なぜなら上手くいく自信があったから。前の社長とかは自信がなかったみたいですが、私は問屋としての自信を持っていたので再開しました。また2010年にケミカルの工場を運営する「ジョイフル」という会社をM&Aしました。この会社はバッテリー液やウィンドーウォッシャー液などを作っています。なぜ買収したかというと、当社がメーカーから商品を買うより、自分のところで作った方が儲かりますから。このジョイフルが作った商品をホームセンターに卸すことで儲けているのです。売上も3億円くらいからスタートして、それが5億、10億となり、今は100億円以上になってもうすぐ200億円になる。こういう戦略でグッと伸びたのです。


――卸売の売上もしっかり伸ばしているわけですね。ただ小売部門の売上はそれよりも伸びていると思いますが、理由としては何が挙げられるのでしょうか。


堀江 小売店の売上が高くなったのは、単純に小売店の出店が多くなったからです。2012年にM&Aをしたバイク用品店の「2りんかん」や2014年にM&Aした新車・中古バイク販売店の「SOX」で運営していた50店舗が当社の連結に入ったことが大きいですね。最近だとコロナによる影響であちこちバイクで移動する人が多くなって、この2つのブランドの調子が非常に良い。よう売れています。卸売と小売のバランスは今はちょうどいいバランスだとは思っていますが、ただこれが本当に良いかは分かりませんし、別に意識してやってきたわけではありません。


▲三密回避の流れから、二輪事業が好調

イエローハットの店舗拡大は堅調に進んでおり、2021年3月末の国内外の店舗数は740店舗。これは堀江社長が就任後、初めて迎えた期末の数字から237店舗増加している。この増加の背景を見てみると、加盟店の子会社化を促進してきたことが大きい。実際、15年3月期には子会社店舗が207、加盟店が405あったのに対して、21年3月期には子会社が365店、加盟店が375店とほぼ半々になっている。


第一期オーナーたちの事業を継承 加盟店から子会社社長に昇格も


――近年は加盟店の店舗を子会社化するケースが増えているようですが、それはなぜでしょうか。


堀江 昔カーショップをやっていて、イエローハットに加盟したようなオーナーさんたちの年齢が高くなり、70歳・80歳になってくる人が多くなりました。「もう、わしはええわ」という人もいれば、「遊びたいわ」という人もいる。また病気になってしまったり、後継ぎが娘さん一人しかいないというケースもある。だからそんな時に、誰かに譲るのであれば本部に買ってもらうというのが一番簡単な方法なわけです。やっぱり加盟店というのは給料が安いですし、休日も少ない。福利厚生がなかったり、極端なことを言ったら退職金制度もない。ですからうちで引き受けると、大体社員の待遇が良くなる。退職金制度もあるし、年間の休みも増える。また全国でドンドン出店しているから、店長や副店長にもなれる。本当にやる気があるなら、しばらくしたら社長にもなれます。実際、加盟店の人間が子会社の社長になっているケースも多いです。


――加盟店のオーナーにしてみても、知らない会社に引き取ってもらうよりは、長年付き合った本部の方が安心しますからね。


堀江 場合によっては、従業員が「わしらを捨ててやめるんかい?」という風になるかもしれない。だからその時に、「いや、俺はお前たちのことを考えて、イエローハット本部に譲るんだよ」と言えば、皆納得するし、オーナー本人も気が楽になる。そういう話をしていたら加盟店がうちに結構店舗を譲ってくれるようになり、段々と増えていったのです。


――本部が引き取るか、譲渡をしたい店舗の近隣加盟店が引き受けるか、明確な基準はあるのですか。


堀江 やはりそこの従業員にとって、近隣加盟店に譲った方が幸せになるのか、うちで引き取った方が幸せになるのか、というのが基準です。加盟店はみんな欲しいと言うのですが、がめつく自分の懐ばかりを考えるようなオーナーだったらうちで引き取ります。あとは戦略的にどんどん出店しなければならない時に、加盟店だと出店がためらわれるような場所であれば、当社が引き受けて出店をする。そのように色んなことを考えながら、どっちにするかを決めます。うちが儲けるということでは考えていません。


同社の2023年3月期(連結)の目標数値は、売上高1500億円、営業利益114億円、経常利益123億円。今後も成長していくためには店舗の出店が欠かせない。直近5年間のグループ全体の出店数は171店に対し、退店は56店舗。単純計算で年間23店舗の純増となる。堀江社長は、「今後の出店には業態変更がポイントになる」と話す。

タイヤショップやカーディーラーの看板替えを促進 

加盟店の子会社化との両輪で店舗を展開


あくまでも〝儲かる店〞での出店 カギは隣接事業者の業態変更


――現在、グループ全体の店舗数は852店になりました。今後の伸びしろは。


堀江 あくまでも出店とは、儲かる店を出さないと意味がない。ですから毎年30店舗、50店舗を出すという考え方では経営が成り立たないと思っています。当社も過去5年間で56の退店がありますが、儲からないで撤退する店は数える程度。ほかは地主さんとの契約が終了したり、道路の拡張で撤退せざるを得なかったりです。たとえば愛知県の名古屋市に「港区甚兵衛通店」という店があったのですが、道路の片方からしかお客さんが入って来ないので、やめて向かいに移りました。これも退店、出店となる。だから退店が多いんです。当社の場合は儲かってしょうがなかったり、今よりもっと儲けようということで、今のうちに退店・出店するというものがほとんどです。


――どのような業態に変更することが多いのでしょうか。


堀江 たとえば京都府の伏見市に四輪の店があったのですが、ここはこの間閉店して、近くにあった2りんかんを移転して始めました。そして前に2りんかんだった場所でSOXをやる。また兵庫県宝塚市の店は中型・大型バイクの専門店に変えたり、

物件の大きさによっては中古タイヤの「トレッド」にも活かせる。ただこれらは当社の子会社同士の店舗だから簡単に変更ができるけど、加盟店の皆さんはそこのお城の城主だから、そうはいなかい。


――イエローハットの新規出店についても、既存店の業態変更を狙っていくのでしょうか。


▲子会社間で業態の変更も活発に行っている

堀江 今は、大きなタイヤ専門店がイエローハットに看板を替えてくれるようなケースを狙っています。大手のタイヤショップはメーカー色が強く、特定のブランドしか扱っていないこともあり、お客さんの選択肢が少ない。ですから経営状況は非常に厳しいと思います。そこで既存の看板をイエローハットに替え、タイヤ以外のバッテリーやワイパーなど最低限のものを置いてもらって、タイヤ中心のイエローハットにする。その都度のケースによるのであまり変なことは言えませんが、看板を替えて店内を改装しても2000万円くらいでできる。下手したら1000万円でもいけるかもしれません。


――ほかにもタイヤショップのように相性が良い物件はあるのでしょうか。


堀江 これから出てくると思っているのが、カーディーラーですね。手ぐすねを引いて待っています(笑)。タイヤショップもカーディーラーも共通しているのが、タイヤ交換を行うピットや駐車場が存在しているという点です。ピットというのは車一台分で大体500万円〜600万円かかりますから、基本の4台ピットだとそれだけで2000万円ぐらいかかりますから。ですからそういった物件が出始めたら、出店も加速すると思います。何店舗出すという考えでは失敗する。あくまでも儲かる店が出てくるかどうかが、今後のポイントになっていくと思います。


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