直近5年で33店舗を出店 老舗喫茶チェーンから50店舗のフランチャイジーへ

シュベール/本橋事務所

(東京都練馬区)


本橋史郎社長(48)

メガフランチャイジーの経営哲学

53年前、東京西部で産声を上げた喫茶店「シュベール」は、一時は最大で15店まで拡大した。そんな同社の2代目社長として就任した本橋史郎氏は、フランチャイズによる積極的な店舗展開を行い、近年ではM&Aも手掛けることでその事業領域を広げてきた。現在の注力事項と今後の戦略について、本橋社長に話を聞いた。

──もともとはオリジナルブランドの喫茶店で店舗展開をしてきましたが、現在はシュベール社と本橋事務所という法人で、「SUBWAY」「かつや」「からやま」「PRONTO」「シャトレーゼ」「上島珈琲店」「珈琲館」「クラスベネッセ」「さかなや道場」「ホルモン焼道場蔵」などに加盟し、飲食中心に50店舗まで拡大しています。特にここ5年で33店舗増店するなど、かなり積極的ですね。


本橋 何か戦略的に行っているわけではなく、私自身、以前から「風見鶏」の考えで出店を行っています。FC本部からいい話があったら聞きますし、加盟もする。ただ加盟するとなったら、いい案件は全部引き受けますと。なぜこう考えたかというと、当社のように直営店が4店舗の規模であれば、希望する立地や金額を伝えても物件は回ってきません。待っていたらいつまでも出店できず、獲りに行かなければなりません。その点、フランチャイズは情報も持っており、スピード感もある。ですから行けるときに行こうという判断で出店しているのです。しかし一方で、当社はやはり飲食の会社ですから、全部フランチャイズのブランドというのも胸が張れません。バランス的には直営とFCの店舗比率が半々ぐらいが理想ですね。


──FCとして初出店したのが1994年ですから、キャリアは長いですよね。近年一気に出店を進めてきたことの理由は何でしょうか。


本橋 実は東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから、各地の駅前で再開発の話が上がり、業態関係なく当社の既存店が立ち退きになっています。実際、直営店だけでもこの3年ほどで7店舗閉店しています。駅ナカの商業施設内に出店していることもあるため、定期借家契約の契約期間が終了すると、更新が難しいことも多いのです。


──商業施設の定期借家契約の契約更新は、それほど難しいものなのでしょうか。


本橋 よほど高い売上を上げている店舗であれば別ですが、そこそこの売上では不安ですね。本来であれば売上が落ちていたり、不祥事や不始末があった場合なら分かるのですが、今は違う。当社で以前経営していた上島珈琲店も、昨年2月に定期借家契約が終了して閉店したのですが、この店舗は数字も伸びていましたし、店長も長年在籍してくれたので、本来ならこれからというところでした。しかし家主側の主張は、別のコーヒーチェーンに変更したいと…以前はパパママストアの規模で飲食店をやれば、駅前でもやっていける時代でした。しかし今は駅前開発が非常に盛んなので、競合がある中では、駅前でもやっぱりやっていけない。そうなると駅ナカの施設に出店することになるのですが、そういった施設は定期借家契約が原則です。また出店したとしても、ユニクロやスターバックスといったメガブランドとも戦っていかなければならないのです。


─そうなると、強力なブランド力を持つFCか、独自性のあるブランドで勝負していくかということになると思いますが。


本橋 昨年の11月に保谷で新店をオープンしたのですが、ここはもともとSUBWAYのFC店として経営していました。しかし定期借家契約の満了を機に、直営の喫茶店と鯛焼きをミックスした新業態としてリスタートしました。これはたまたま当社が伊勢の方にある鯛焼き店とつながりがあり、そこから鯛焼きを用いた喫茶店をやろうという話になったものですが、非常に生地にこだわりを持った鯛焼きなので、地方の良いパッケージを東京に持ってきたいと考えていた当社の考えと合致したのです。従来のシュベールのモデルである40坪・100席ではなく、20坪の規模ですが、テイクアウトも行うなどして甘味処のような形にしています。3月にも鷺宮で似たような形のパッケージでパーラーをオープンする予定です。


──新たなパッケージを作り、差別化していくということですね。


本橋 今、商業施設側は、新しい業態を欲しています。これは飲食業態の業態寿命自体が縮まっていることに理由があると思います。一昔前であれば10年ぐらいだった業態寿命が、今では3年から5年ほどのサイクルになっています。ですから他のフランチャイジーさんも、今は結構ブランドの入れ替えを行っている時期なのではないでしょうか。実際、当社で加盟するFC本部からは、他の企業様で経営する店舗の譲渡案件がここ1年で3件ありました。


伊勢の鯛焼き店とのコラボも開始

別法人立ち上げ新規事業を強化

モチベーション高い社員の受け皿に


──2012年に、シュベールとは別でフランチャイズ事業を行う本橋事務所を設立しています。


本橋 これには大きな理由が3つあります。1つはシュベールだと、競業禁止の観点でカフェ業態ができないということ。2点目はシュベールで展開できない地域やブランドにも挑戦するという意味。そして3つ目が、社員や従業員の受け皿となる場所を提供するというものです。実際、地方展開という点では、2017年には愛知県で中食事業を26年間手掛けている美炎という会社をM&Aし、昨年10月には浜松の給食会社もM&Aさせてもらいました。さらに今月は浜松で介護事業を手掛ける企業様をM&Aさせていただくことになっていますが、こうした取り組みを通じて、地方での事業展開と人材の確保ができればと考えています。


──飲食業は昨今、人材の採用が特に厳しいと聞きます。


本橋 当社の場合、現在は都内を中心に出店しているので、都内で人がそこまでいなくなるということは考えづらいです。以前は学生やフリーターだけでしたが、今では主婦や高齢者の方も飲食で働くことが一般的だからです。そして今後はその対象が外国人にも広まっていきます。確かに働き方の部分では変わってくると思いますが、それを受け入れる側がちゃんとニーズにアジャストしていけば、そんなに困ることはないと思っています。


──御社ではどのようにニーズに対応しているのですか。


本橋 当社のグループ会社では不動産事業も行っています。そしてそこで発生した空き室を社員寮にしており、実際に地方から15名が働きに来ています。こうした取り組みも2・3店舗だけ展開する企業では難しいことかもしれませんが、10店舗、20店舗ぐらい展開する体力がある企業であれば、可能なはずです。


──歴史ある企業では、働くスタッフの高齢化も進み、これまで通りの仕事をしてもらうのがきつくなってきたという話もあります。従業員の受け皿を作るという課題は、御社クラスの企業ならどこでも直面しているかもしれませんね。


本橋  社員が身体を壊したりした際に、セカンドキャリアとして同じグループ内で働く場所を提供したいと思っています。また社員が新たに挑戦したいという場所を作ってあげるという意味も含めて、本橋事務所は存在しています。


──現在、社員が約50名、パートアルバイトが1000名と伺いました。従業員の教育やモチベーション管理はどのように行っていますか。


本橋 月に一度の定例会議のほか、部門外でのレクリエーションを年に2回行っています。その中で一番大切にしているのが、風通しのよさ。当社の場合、「このエリアはこの業態だけ」という形で展開せず、一つのエリア内で複数の業態が混在しているので、まずはみんなで顔を合わせて風通しのよさや連携の是正をしていかないといけないですからね。


「純喫茶シュベール」は、昔ながらの落ち着いた雰囲気が特徴

来年の「50期・50億円・50店舗」目前に

業態多角化でポートフォリオを組成


──さまざまなFCブランドに加盟をしていますが、その選定基準は何でしょうか。


本橋 やはりこれまでメインにしてきた飲食事業が優先的になりますが、それよりも加盟するブランドの特性もあります。たとえば3店舗展開しているシャトレーゼは、売上も前年比110%で推移していますが、原価が7割ほどなので、利益でいうとそこまで強くはない。また立地でいうと、「かつや」はロードサイドなので、男性ドライバーしか見ていませんし、「シャトレーゼ」であれば女性のドライバーしか見ていません。しかも同じシャトレーゼでも保谷店は駅から近いので通勤や通学客も多く、流動客は2割ぐらい取り込めています。このように瞬間風速の大小、夏に強い業態・冬に強い業態など、ブランドや立地によってさまざまな特性がありますが、一番良いのは波のない安定した業態。ただ飲食業界の変動も大きいですから、当社としては個店でカバーするのではなく、さまざまな業態を通じてカバーしていくようなイメージです。


──多種のブランドという意味では、「クラスベネッセ」だけが、飲食事業ではありませんが。


本橋 クラスベネッセは、私自身、長男の幼稚園や学習塾の送り迎えをしているときに知ったのがきっかけです。そこで興味深かったのが、飲食ではお客様に対して従業員が「有難うございます」と言いますが、学習塾では逆に従業員が生徒やそのご両親に「有難うございます」と言われる。こんな世界もあるんだなと思ったのです。また実際に始めてみると、投資モデルや店舗作りの点で非常に飲食と近い。このように、実は業態や業種の垣根がありそうでないことに、最近気付いたのです。


──フランチャイズビジネスのメリットは。


本橋 やはり店舗の立ち上げや展開においてスピード感があることが一番だと思います。また本部が保有する情報量も多く、大手チェーンではその情報を用いて本当に先々を見据えて展開しています。そして決断も、ある種思い切りがいい。これが直営店だけで展開していると、どうしても昔ながらのやり方に依存してしまうので、なかなか変わりきれないのです。


──来年は設立50年目となります。今後どのような会社にしたいですか。


本橋 数値的な目標では、グループ全体で「50期・50億円・50店舗」を目指してきましたが、店舗数についてはここ数年で色んなお話をいただいた結果、既に50店舗になっておりまして(笑)。売上高については現在38億円ほどなので、あと少しですね。


──社長を引き継いで20年の節目にもなります。個人的にも感慨深いのでは。


本橋 私が着任した当時は、まだ手掛ける店舗も15店舗ほどでした。ですから店舗数が増えたということの喜びはあります。ただ一方で、ここ1・2年で強く感じることもあります。それは何かというと、会社のブランドの裾野を広げるということ。私は仕事で毎週愛知や浜松に車で行くのですが、途中にある富士山を何回も見ているうちに、富士山は裾野が一番綺麗なことに気付きました。そして裾野が広いからこそ、あの奥行きと高さがあるんだなと。ですから自分の会社も、そのようにしていかなければならないと思っています。


──よりブランドの多角化を進めていくということですね。


本橋 やみくもに進めるというよりも、自分たちで新たな道を作っていくことが重要だと思っています。私の父は自分でブランドを作り、家族や従業員を守ってきました。私の場合はその作られた土台の上を作っている。ですから50年を迎えるタイミングで、新たに土台となるものを自分たちで作っていこうと。そのために直営店の展開については、加盟しているFCのストロングポイントを積極的に取り入れながら形にしていきたいと思っています。

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