流行り物・奇をてらったブランドには手を出さない

タニザワフーズ(愛知県岡崎市)

谷澤憲良会長  谷澤公彦社長

国内有数のメガフランチャイジーであるタニザワフーズ(愛知県岡崎市)。愛知・静岡両県で展開するFC店は、外食8ブランド94店舗にも及ぶ。40年以上にわたりフードサービス事業を牽引してきた谷澤憲良会長と、新たに社長に就任した公彦社長に、これまでの歩みや事業戦略などについて聞いた。


――「KFC(ケンタッキーフライドチキン)」「吉野家」「かつや」「サブウェイ」など、8つの外食ブランドを展開されています。フードサービス事業に注力するようになった経緯について教えて下さい。


谷澤会長 昨年創業70周年を迎えたタニザワフーズは、もともとニット製品のメーカーとして私の父が創業しました。ここ岡崎市は、徳川家康公や八丁味噌で有名ですが、実は昔から繊維産業も盛んで、当社以外にも、大手メーカーの工場をはじめ、多くの繊維・紡績関連企業がありました。


 昭和20年代から30年代は子供の数が急激に増えた影響でニット製品がよく売れました。ところが40年代に入ると、海外からの輸入製品の勢いに押され、業績に陰りが見え始めました。私が入社したのは丁度この頃で、会社の立て直しを図るべく、全国を巡って参考になるような会社を探しました。しかし、残念ながらそういう会社は見つからず、ニット一本でやっていくことに限界を感じました。そこで新たな事業として昭和47年に不動産売買をスタートさせ、これが後々、フードサービス事業に進出するきっかけにもなりました。


――最初に出店した外食店は「ステーキのあさくま」だそうですね。どういう縁で加盟されたのですか。


谷澤会長 最初は土地探しのお手伝いをしていたのですが、ある時「やってみないか」と声を掛けられました。「ステーキのあさくま」と言えば当時は大人気店でしたので、これはチャンスだと感じましたね。工場の仕事はすべて下請けに出し、跡地を利用して岡崎店そ出店しました。昭和50年のことです。これが見事に当たり、店の前には連日大行列ができました。最高で月に3000万円を売り上げたこともありました」


――2年後には繊維事業から完全撤退。以降はフランチャイズを利用したフードサービス事業に注力されています。


谷澤会長 あさくまの業績が期待以上に良かったことだけでなく、ライバル店が隣接地に出店しようとしたことも、フードサービス事業に転換するきっかけになりました。


 当時、我々の店の成功を受けて、木曽路系のファミリーレストラン「地中海」が隣の土地に出店する計画がありました。さすがに「これはまずい」と思い、先方に掛け合い、少し離れた場所に計画を変えてもらいました。すると隣接地の地主から、「借り手がいなくなったから、谷澤さんのところで土地を使ってくれ」と言われ、いくつか検討した結果、「ロッテリア」を出店することにしたのです。両店の間を共有の駐車場にしたのですが、当時このようなモデルがなかったため、随分と話題になりました。


――現在、展開している8ブランドの中でもっとも店舗数が多いのは「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」です。これはいつ頃加盟されたのですか。


谷澤会長 KFCはうちにとって3番目のブランドになります。これは三菱商事が出資するファストフードチェーンですが、ニットメーカー時代に三菱レーヨンと取り引きしていた縁で加盟することになりました。現在、愛知と静岡で合計44店舗を出店しています。


――さまざまなブランドを多角的に展開する狙いは何でしょうか。


谷澤会長 一つは「地域の食文化に貢献する」という、我々の掲げる理念を実現するためです。食に対する4人々のニーズは、どんどん多様化しているため、一つのブランドだけではこれに対応することができません。しかし、複数のブランドがあれば、需要のなくなった店舗に代えて別のものを出店し、新しいニーズに対応することができます。


 また、多彩なブランドがあれば、一つの商圏内にいくつもの店舗を出すことができます。愛知と静岡でドミナント戦略を推進している我々にとって、「出店できない」ことはすなわち「会社の成長が止まる」ことと同義です。特定のエリアに特化しながら、成長戦略を描いていくためにはチェーンの多角化は不可欠というわけです。


――例えば、食中毒で特定の食べ物の需要が落ち込んだ場合も、多角展開しておけば別のもので売上を補完できるメリットもあります。


谷澤会長 うちの場合、肉で言えば牛、豚、鳥とすべて揃っていますので、一度に駄目になることはありません。


――すでに退会しているものも含め、色々なブランドに加盟してこられました。選定基準のようなものはあるのでしょうか。


谷澤会長 最も重視しているのは、長期的に続く業種・業態であるかどうかということです。逆に言えば、流行りものや奇をてらったようなものには絶対手を出しません。売れているときは儲かるかもしれませんが、それが終わったら誰からも見向きもされなくなってしまうからです。そうなれば撤退という選択肢しか残されていません。これで一番迷惑を被るのは誰か、それはそこで働いているスタッフです。店がなくなれば彼らは行くところがなくなってしまいます。雇用面を考えても、地に足を付けてできるものを選ばなければなりません。過去には失敗がなかったわけではありませんが、今あるブランドを見ても分かるように、長く支持されるブランドを選んできたつもりです。


――外食業界全体で言えば、人手不足が深刻化しています。これだけの店舗を展開していると、影響もそれなりにあるのではないでしょうか。


谷澤社長 最近は、自宅から近い場所で働きたいという方が増えているように思います。広範囲で募集をかけても人がなかなか集まらないため、店舗から30分圏内を一つのエリアとして採用活動しています。最近だと静岡にある店舗の募集を強化するために、現地に事務所を開設しました。


――今後の事業展開について教えて下さい。


谷澤社長 店舗に関しては今後も、年に2、3店舗ペースで出店していくつもりです。今年度もすでに3店の出店が決まっています。


 また、既存店売上を伸ばすために、テイクアウトにも力を入れていきます。以前は外食の中で競争していましたが、今はそういう時代ではありません。中食や、イートイン・グローサラントのような新しいモデルの外食サービスと競争していくためには、店舗を中心にサービスの幅を広げていく必要があると考えています。

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