女性向け生活用品、健康食品のファブレスメーカー5年前の上場断念乗り越えジャスダックに上場/グラフィコ/長谷川純代 社長


グラフィコ

(東京都品川区)

長谷川純代社長


9月24日にジャスダック上場を果たしたグラフィコ(東京都品川区)。同社は、女性をターゲットにした生活用品や化粧品、健康食品を開発・販売、2004年の本格始動以来増収増益を続けている。2021年6月期の売上高は36億5000万円を見込む。同社を率いる長谷川純代社長は、もともと広告デザイナー出身。異業種での経験が商品企画に生かされているという。

(※2021年2月号「話題の会社を直撃 1」より)

長谷川純代社長

PROFILE はせがわ・すみよ

群馬県出身。東京家政大短期学部卒。モデル活動を経て、1996年11月スタジオグラフィコ(現グラフィコ)設立。2004年7月オリジナル商品を開発。現在のビジネスモデルに転換する。

ミリオンセラー8アイテム 今期売上高36億円超見込む


累計販売数「優月美人 よもぎ温座パッド」1425万個、「オキシクリーン 日本オリジナルタイプ」886万個、「フットメジ 足用角質クリアハーブせっけん」760万個…。


生活用品や化粧品は、新商品を発売してもヒット率は0・1%といわれる。常に1000以上の商品を抱えている大手メーカーに対し、同社は、70アイテムしかない。しかし、100万個売れているものは8アイテムにも及ぶ。


「もうすぐミリオンセラーになるアイテムも2あります。当社の商品はロングセラーが多く、『よもぎ温座パット』は2008年発売で、改良を加えながら12年間継続的に売れています。使用実感が高ければリピーターがつく。そんな商品を作ってきました」。長谷川社長は胸を張る。 

同社の2020年6月期売上高は、34億9900万円、今期は36億5000万円を見込む。「コロナ禍での外出自粛や訪日外国人客の減少で、健康食品や美容品は苦戦しました。その分、衛生商材がカバーしてくれました」(長谷川社長)。


同社の強みは、「変化や悩みの多い女性のライフスタイルを応援し、自らが消費者として女性ならではの企画・開発ができること」(長谷川社長)。それは同社の社員比率にも表れており、日本企業の女性従業員比率が25・2%なのに対し、同社は57%。このうち子育て中の女性従業員は20%だ。商品開発に携わる企画本部に限れば実に80%以上を占める。


例えば女性向けの携帯カイロ「優月美人 よもぎ温座パット」は「よもぎ蒸し」から着想を得た商品で、体を温めることで冷え性や生理痛の改善につなげることを目指す「温活」という言葉を広めた。また足専用の石鹸「フットメジ」など、ユニークな名前の商品も少なくない。開発スタッフが消費者とのコミュニケーションを重視し、購買調査やイベント・座談会等を通じて、消費者の生の声を企画開発に反映させた結果だ。


「開発に当たっては、同時に国内外の協力企業と開発・試作を繰り返し、納得のいく使用実感に高め、最終商品を生み出しています。開発から販売までの期間は約2年間で、年間に投入する商品は改良品含めて5〜7アイテムですが、その分、息が長い商品が多い」(長谷川社長)。


商品はドラッグストアなどのリアル店舗で販売。ウェブ、テレビ、イベント等を連動させるプロモーションを展開する。「消費者視点で興味や共感を大切に、認知獲得とユーザーを拡大していきます」(長谷川社長)。話題になる商品が多いため、メディアで取り上げられるケースも多く、これがまた話題を呼び、認知度が高まる、という訳だ。ヒット率を高め、より確実に売れ続ける商品を投入し、在庫を極力減らす。上げた利益を次の商品企画に投資する。生産は70か所にも及ぶ提携会社に委託する。このサイクルによって、同社は無借金経営を続けている。


デザイン会社から商品企画・製造に社内改革で事業効率化


長谷川社長は東京家政大の研究所で美術を専攻、モデルとして活動した後、1996年に広告デザインの会社を設立。デジタル化の時代到来に合わせて、グラフィックデザインで、実績を重ねてきた。やがて大手化粧品会社から仕事を任された。

ここで長谷川社長は、現在でもベストセラーとなっている商品の企画に携わった。「化粧品会社や百貨店での仕事に携わることで、商品企画のノウハウも蓄積していった」(長谷川社長)。


さらに成長したいと考えた長谷川社長は、2004年、思い切って業態転換することにした。最初は海外健康食品の日本市場向けプロデュースだ。これが成功したことで自社企画商品を増やしていった。女性に合わせた商品は、巷に多くあるが、たとえば足専用石鹸「フットメジ」は、足は一番汚れるのに、こうした専用商品はなかった。また、サプリメント「なかったコトに!」等、インパクトあるネーミングが、健康食品という広告費に制約がある中で浸透させることに成功した。


▲同社のヒット商品。10年以上売れ続けることも

順風満帆に業績を伸ばしてきた同社が転機となったのは2015年だった。実はこの年に東証マザーズ上場が計画されていた。「機関投資家への説明会も終えて後は上場を待つばかりだったのですが、暖冬の影響で予想以上に商品の返品が来てしまった。当時の商品は季節性の高いものが多かったのが響きました。これでは例え上場を果たしてもすぐに業績修正する可能性が高い。断腸の思いで上場を取り下げました」(長谷川社長)。


「何がいけなかったのか」。長谷川社長は思案投げ首し、大胆な社内改革に打って出た。

まず商品構成を見直し、主力商品を季節に関係なく売れる洗剤商品に置いた。また、消費者の実際の購買状況をリアルタイムで把握できるシステムを取り入れた。「商品は問屋に卸してしまえば、その先はどのように売れているのか見えていなかった。これを自社でも共有できるようにした」(長谷川社長)。


洗剤に関しては返品不可にして販売店に卸す仕組みに変えた。「その分、確実に売れる商品を作るために、マーケティングをさらに強化した」(長谷川社長)。


矢継ぎ早に手を打ち、自信を深めた長谷川社長は再度上場に向かった。2020年9月24日、同社は晴れてジャスダックに上場を果たしたのだった。

「決して規模の大きくないメーカーが、今後さらに成長していくためには、知名度の向上と社会的認知獲得は欠かせない。上場するメリットは大きい」(長谷川社長)。


コロナ禍で新たな開発ヒント得る 海外販売・EC事業も強化


同社は今後も女性をターゲットにした様々な商品を開発していく考えだ。取り巻く環境は大きく変わりつつある。同社にとって追い風は続く。

コロナ禍でも、新たな商品開発のヒントを得た。「アンケートを取ったところ、在宅が増えたことで、肩や腰を痛める女性が増えているのがわかった。こうした声を商品開発に反映させたい」(長谷川社長)。


一方で課題もある。近年のヒット商品、酸素系漂白剤「オキシクリーン」シリーズは全体売上の60%を占めている。この売上を維持しつつ、他の商品の売上を上げていくか、バランスの良いポートフォーリオ作りは不可欠だ。


また同社の販売経路は、約80%をドラッグストアや百貨店などのリアル店舗を占める。ECでの販売比率を向上させていくのかは、喫緊に取り組む必要がある。「めまぐるしく変化する時代、ニーズを迅速・柔軟に先取りし、国内外のさらなる販路の拡大や、商品とサービスの新しいアプローチで、女性のより深い悩みをサポートしていきたい」(長谷川社長)。

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