大手レコード会社出資で音楽著作権管理事業JASRACの対抗軸として成長目指す/NexTone阿南 雅浩社長

NexTone(東京都渋谷区)

阿南 雅浩社長


音楽の著作権管理を手がけるNexTone(ネクストーン・東京都渋谷区)が3月、東証マザーズに上場した。著作権の管理事業は一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC=ジャスラック)が法律で唯一認可された団体だったが、2000年に新たな法律が成立したことを機に、新規参入した2社が合併して同社が誕生。対抗軸としてJASRACの牙城の切り崩しに挑む。(※2020年10月号「話題の会社を直撃」より)


阿南 雅浩社長

PROFILE あなん・まさひろ

1986年4月シービーエス・ソニーグループ(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)入社。2007年9月エイベックス・グループ・ホールディングス(現エイベックス)執行役員、2014年6月エイベックス・ミュージック・パブリッシング代表取締役社長に就任。2015年3月イーライセンス(現ネクストーン)取締役、10月代表取締役社長に就任。2016年2月ネクストーン代表取締役CEOに就任(現任)。


2000年規制緩和が契機に利用者の立場に立ったサービス提供

ネクストーンは、規制緩和を目的とする「著作権等管理事業法」の成立を機に、音楽著作権管理事業に参入した民間会社のイーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)が合併して2016年に発足した。

音楽著作権は演奏権、録音権、出版権、貸与権の大きく4つに分けられる。その権利の管理を権利者(作詞作曲家等)から委託され、利用者(放送局等)に利用を許諾し、使用料を徴収・分配する業務が著作権管理業務だ。

この業務の市場規模にあたる著作権使用料徴収額は、全体で約1200億円であり、JASRACの徴収額が現在でも95%のシェアを占めている.後発の同社は徴収額シェアとしては5%程度だが、管理作品数を2016年度の約10万曲から3年後2020年度には約17万曲に伸ばして業績を拡大。2020年3月期の連結業績は売上高34・1%増の43億4500万円、営業利益は67・5%増の3億500万円となった。

著作権管理業務は元々、非営利団体のJASRACが国内では唯一の団体として独占していた。法改正以降、JASRACは音楽著作権を4つの権利(支分権)と7つの利用形態に細分化し、それぞれに管理手数料率を設定。全国に支部を配置して徴収業務を行っている。「JASRACは徴収業務においては非常に優秀です。ただ、一社独占のため競争原理が働かず様々な不具合が生じていると感じていました。現在も演奏権は独占しており、手数料含めて権利に選択肢はありません。当社は民間企業として全ての支分権管理に参入し、利用者や利用形態に応じたきめ細かいサービスを用意し、音楽ユーザーの立場に立ったサービスの提供を行っています」(阿南雅浩社長)。


音楽プロモーション支援など『攻め』のビジネス展開


同社の主力は売上高の約90%を占める「著作権等管理事業」だが、大元の音楽著作権管理のシェアについては先行のJASRACに大きく水を空けられている。この著作権管理の市場を取るべく、同社は独自のノウハウを活用した『攻めのビジネス』を展開し、「最終的には市場シェアの半分を取る」(阿南社長)ことを目標としている。

その戦略の1つが「デジタルコンテンツディストリビューション(DD)業務」だ。これは前身のイーライセンスが始めたビジネスであり、JASRACが未開拓の領域だ。アップルやユーチューブなど世界の音楽配信プラットフォームに原盤を供給するサービスであり、同社は音楽事務所や独立系のアーティストなど約600社と契約して世界の音楽配信事業者との橋渡しをしている。


■著作権管理業務の流れ

もう1つ注力しているのが、「キャスティング業務」だ。アーティストの音楽プロモーション支援を積極的に行い、著作権管理業務の拡大につなげている。「人気バンドのザ・イエロー・モンキー再結成時には、新曲の著作権管理を獲得し、JASRACに預けている既存曲の移管に成功。

その代わり当社はイエモンの楽曲を世界100社、500サイトに一斉配信し、復活ライブのライブビューイング、チケット販売などでフルにサポートしました。結果、彼らの収益の機会を増やし、次の曲からはネクストーンとやろうよという方向にもっていくことになりました」(阿南社長)。

安心して楽曲を預けられるパブリックカンパニー目指す


同社の設立の狙いは、「JASRAC対抗軸としての野党連合」だ。長年、音楽著作権管理にかかわった経験から、「市場には健全な競争原理が必要だ」と考えていた阿南社長は、音楽やゲームなどの業界に呼びかけて広く応援を募り、エイベックスをはじめ、アミューズ、コーエーテクモホールディングス、ソニー・ミュージックエンターテインメントなど大手が株主となって2社合併が実現した。

上場の目的は信頼性の担保であり、調達した資金は人材採用とシステム開発に投資する。「音楽が新しいメディアとともに複雑で幅広くなっており、適正な配分をするには複雑なシステム開発が必要です。競争力の源泉はシステム開発であり、上場して集めた資金はシステム開発に投資します。当社はシステム会社の子会社を運営し、複雑な著作権管理のシステムを低コストで運営しています」(阿南社長)。


プラットフォームに向けたディストリビューション

成長戦略として、国内の演奏権市場シェア50%以上を占めるカラオケ業者と連携して演奏権市場に参入する計画。また、世界のエンターテインメント市場は2兆円ともいわれる有望な成長市場であり、日本の音楽の海外配信を増やして海外メディアとのビジネスを拡大させていく。

「著作権は作者の死後70年にわたって存続する権利であり、安心して楽曲を預けられる会社でなければならない。そのためにパブリックカンパニーであることは重要であり、個人の投資家さんたちに当社を知ってもらいたいと考えています」(阿南社長)という。

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