回転寿司最大手スシローが挑む大衆寿司居酒屋調達、物流、衛生管理など、グループのシナジーを最大限に発揮/鮨・酒・肴 杉玉/木下 嘉人 社長


スシロークリエイティブダイニング

大阪府吹田市

木下 嘉人 社長(44)


―売上高約2050億円―コロナ禍を物ともせず、業績を伸ばす回転寿司最大手のスシローグループが、フランチャイズ事業に本腰を入れる。2017年に立ち上げた大衆寿司居酒屋「鮨・酒・肴 杉玉」の全国展開に向け、加盟店募集を積極化させるという。同業態を運営するスシロークリエイティブダイニング(大阪府吹田市)の木下嘉人社長が、今後の事業戦略などについて語った。(※2021年4月号「トップ直撃」より)



木下 嘉人 社長(44)

Profile きのした・よしひと

1976年生まれ。大阪府出身。1999年3月、同志社大学経済学部卒業。アルバイトを3年半経験後、あきんどスシローに入社。2016年、スシローグローバルホールディングス執行役員総務部担当に就任。以後、グループ各社の要職を歴任し、19年12月にスシロークリエイティブダイニングの社長に就任。現在は、スシローグローバルホールディ

ングスの常務執行役員、社長補佐兼品質管理管掌も兼務。

食事業態を併せもつ これまでにない新しい居酒屋


――大衆寿司居酒屋「鮨・酒・肴 杉玉」(以下 杉玉)が話題になっています。回転寿司「スシロー」に注力してきたスシローグループが、居酒屋の分野に進出した理由を教えて下さい。


木下 我々、スシローグローバルホールディングスは、「うまいすしを腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」という企業理念を掲げ、価値のある商品を、お値打ち感のある価格で提供してお客様に喜んで頂きたいという考えで、回転寿司を主体に事業を展開しております。一方でこの数年、回転寿司とは別の形で、お寿司を楽しんで頂くための新たな場を提供できないかと、いろいろな業態に挑戦してきました。女性をメーンターゲットにしたもの、お洒落な雰囲気のもの、食材にこだわって少し高めのゾーンを狙ったものなど、候補はいくつかありましたが、実際にやってみて一番手応えがあったのが「杉玉」でした。現在、FC5店舗を含め、27店を出店しています。


▲「杉玉」店舗外観

――海鮮をウリにした居酒屋は、大手をはじめ、すでにいろいろなチェーンがしのぎを削っています。競合他店に対する「杉玉」の優位性について教えて下さい。


木下 業態としての特性は3つあります。中でも一番の強みだと考えているのは、圧倒的なコストパフォーマンスです。「杉玉」のメニューは299円スタートで設定しているのですが、この価格帯で高品質なものを提供できるのは、国内で回転寿司を559店舗(2020年9月末時点)展開するスシローグループの調達力があるからです。しかも、単に良い食材を安く仕入れることができるだけでなく、スシローでは使えない食材を我々の方でうまく活用するといった工夫もしています。例えば「アジの骨せんべい」というメニューがあるのですが、これは回転寿司でアジの身を取り、残った骨を我々の方で活用してご提供しています。マグロの尾の身も、以前だと使い道がありませんでしたが、「杉玉」ができたことで、ステーキとして提供することができるようになりました。

こうした工夫ができるのも、我々のグループならではの強みだと感じています。


――食材を無駄にすることなく、有効活用できる点は素晴らしいですね。2つ目の特性は何でしょうか。


木下 メニューや店づくりにおいて、遊び心を感じられる要素を採り入れていることです。とにかく楽しんでもらえるように、メニュー名や料理の見た目にこだわったり、アイコンとなる杉玉を飾ったり、壁に大きなイラストを描いたり、いろいろ工夫しています。イラストにはちゃんと意味があって、お寿司はもともと「ハレの食」ですから、それが伝わるように、鯛や伊勢海老、五穀豊穣を願う船の絵にして〝ハレ〞を演出しています。あと、お寿司屋さん独特の

〝粋〞を感じてもらえるように、あえてカウンター席を設けている点もポイントですね。写真を撮っていかれるお客様は非常に多いです。


――実際に店舗を訪れてみると、一般的な居酒屋とは異なり、家族連れやカップルでの利用が意外と多いなという印象を受けました。


木下 それが3つ目の特性です。我々は「杉玉」を、サラリーマンやお酒が好きな方だけでなく、もっと幅広く、利用シーンを選ばない大衆居酒屋にしたいと考えています。店内の雰囲気を明るくするために白木を使っていたり、照度の高い照明を使っているのも、そのための工夫です。お子様連れでも利用しやすいように、掘りごたつの座席も用意しています。実際、全体の3割弱はカップルや女性のグループですし、ファミリーの利用も2割くらいあります。今はコロナ禍で外食店はどこも厳しい状況が続いていますが、うちに限って言えば顧客ターゲットを広くしているおかげで、客足の回復は早いです。テイクアウトでお寿司を買っていかれる方も増えていて、今では売上の10%程度を占めるまでになっています。居酒屋でありながら、お寿司という食事業態を併せ持つ「杉玉」の強さがいかんなく発揮できているなと感じています。

▲明るい雰囲気の店内。壁には手書きのイラスト


――グループ内でのシナジー効果についてはどうお考えでしょうか。


木下 先程、申し上げた仕入れの部分が最大のシナジーだと思いますが、他にも物流面や衛生管理の面でも、高い効果があると感じています。あとはPR活動や広告宣伝活動においても、スシローで培ってきたノウハウや各メディアとの関係性がうまく活かされていると思います。物件情報についても、内容によってはスシローではなく、我々の方で活かすことができるものもあると考えています。


――外食ビジネスにおいては、運営の効率化を考える上で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が不可欠になりつつあります。実際、回転寿司業態では、かなり積極的にDXに取り組んでおられますが、「杉玉」ではどうなのでしょうか。


木下 大衆寿司居酒屋の活気を大切にしたいので、お客様と接する部分ではあえてDXという考え方を採り入れないようにしています。アナログ的ではありますが、お客様と従業員、あるいは従業員同士の掛け声があるのとないのとでは、雰囲気がまったく変わりますからね。一方で、DXとまではいきませんが、売上の動向分析であったり、商品の販売動向といった部分については、時間帯ごとに分析できるようになっているので、メニュー作りの部分で活用しています。


――調理の面ではどうなのでしょうか。


木下 今の時点では特段、考えていません。自動化するとなると、それだけ店舗を広くしないといけないので、今のビジネスモデルは難しいですね。「杉玉」のモデルで投資回収できる安価なものがあれば話は別ですが、今はそこまでメリットもないと考えています。


200店舗200億円を目指し 加盟店募集を本格化


――主力の「スシロー」は直営による店舗展開を進めていますが、「杉玉」はフランチャイズも含めた出店戦略を掲げています。


木下 出店スピードを速めたい、そしてマーケットの特性をきちんと理解した上で、それに応じた店舗展開、立地選定を行いたいと考え、FCにも着手しました。直営だけで、その地域に喜ばれる店作りをしていくとなると非常に時間がかかりますが、マーケットに精通した加盟店とタッグを組めば、より良いお店を、スピード感をもって出していくことができると考えています。


――現在は、関東、関西での出店が目立ちます。募集エリアはどうなっているのでしょうか。


木下 物流の問題もありますので、順次、エリアを広げながら進めているところです。現状、関東、関西の他は、福岡に2店舗出店しています。


――「杉玉」のフランチャイズビジネスとしての魅力は何でしょうか。


木下 高品質な食材を安価で調達できるというのが一番大きいと思いますが、他にもメニュー開発の部分で、優位性を感じてもらえると考えています。「スシロー」を見てもらえれば分かるかと思いますが、かなりの頻度で季節メニューを投入しています。これは「杉玉」の方でも活かされていて、2カ月に一度、グランドメニューとは別に季節メニューを20品目ほど投入しております。今回のコロナ禍では、テイクアウトメニューも追加投入しました。


▲スシローの商品開発力で、季節限定メニュー投入

――フランチャイズに加盟して店舗を出す場合、開業にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。


木下 物件取得費を除き、4000万〜4500万円くらいの費用がかかります。内訳は、加盟金が500万円、保証金が300万円、店舗設計料が40坪未満で150万円、あとは内外装費や厨房機器購入費、レジ・パソコン代などです。これはあくまでもスケルトンの場合ですので、居抜き店舗を利用する場合は、金額はもう少し下がります。


――初期投資額の大きさを踏まえれば、加盟対象は法人ということになるかと思います。外食経験の有無は問われるのでしょうか。


木下 明確に定めているわけではないのですが、生の魚を扱う業態であるということを踏まえ、現状は経験のある企業様が加盟されています。経験がない場合には、運営体制をど

う整えるのか、その辺のお話をさせて頂いた上で判断させて頂くことになります。


――調理のスキルに関しては、一定以上のレベルが求められるのでしょうか。


木下 職人に依存する必要がないように、調理工程はなるべく簡素化するようにしています。ただ一方で、こだわりたい部分については仕込みもしっかり行い、お客様に提供する直前まで手を加える場合もあります。いずれにせよ、それほど難易度は高くありません。実際に、うちでマネージメントしている店長や副店長の中には、居酒屋で働いたことや魚に触れた経験のない者もおります。店舗によっては、すべての工程を、社員の代わりにアルバイトスタッフが行うこともあります。研修はオープン前に2週間、オープン後に我々のSVチームが入って2週間行うのですが、それで十分対応できるレベルのオペレーションになっています。


――初期投資の回収はどのくらいを目処に考えればよろしいでしょうか。


木下 モデルとしては、月商800万円を目標にし、4年程度で回収できればと考えています。もちろん、店舗によって投資額は変わりますし、今はコロナ禍で状況が読めない部分もありますが、実際には初月から目標数字を超えた店舗もあります。


――「杉玉」ができて3年以上が経過しました。今後の改善点があれば教えて下さい。


木下 我々の良さをもっと分かりやすく伝えられるように、お店の見せ方やメニューの打ち出し方にもう少し工夫が必要だなと感じています。今、いろいろな部分で検討を進めている状況です。


――店舗数、売上等、中長期的な目標についてはどのようにお考えでしょうか。


木下 200店舗、200億円を一つの目標として設定しています。


――「スシロー」は海外展開にも積極的です。将来的に、「杉玉」も海外展開に乗り出す可能性はあるのでしょうか。


木下 検討の余地は十分あると思っています。国によってはアルコールと食事とがまったく別であったり、調達できる食材が限られていたりすることもあるでしょうから、業態のカスタマイズを含め、いろいろなことを検証する必要があるでしょう。いずれにせよ、物流やマーケットへの理解、人材調達などのことを考えると、スシローが進出しているエリアから考えていくことになると思います。その方がグループのメリットも生かせるでしょうからね。

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