“和”をコンセプトにした食品セレクトショップ、埋もれた地方の優良メーカーを発掘し、約1100アイテムを販売

久世福商店、サンクゼール

(サンクゼール:長野県上水内郡)

久世 良三 会長(68)

Pro­file くぜ・りょうぞう

1950年、東京都出身。慶応大学経済学部卒業度、ダイエーに入社。1年で退社後、父経営する食材卸会社、久世に入社1975年、同社を退社して長野県で「ペンション久世」をオープン。その後、製造小売業に参入し、「サンクゼール」「久世福商店」などを次々にオープン。



全国の美味しいものを取り揃えた食品専門のセレクトショップ「久世福商店」 。2013年のブランド発足以降、商業施設などを中心に出店を進め、別業態の「サンクゼール」および両者の複合店を含めた店舗数は148店(2019年7月時点)を数える。メディアでも話題の注目ブランドを取材した。




商業施設を中心に

全国で118店を展開


——一風変わったジャムや調味料、菓子類など、 「久世福商店」の店頭に並ぶ商品は、どれも他では置いていない珍しいものばかりです。どういったコンセプトで商品を集めているのでしょうか。


久世 地方に目を向けると、高品質で美味しい食材を作っているメーカーは非常にたくさんあります。しかし、大手の流通チェーンは主要メーカーのものを中心とした品揃えをしているため、彼らの商品が消費者のに留まる機会はほとんどありません。「久世福商店」では、そうした商品をバイヤーが見つけ出して、実際に現地へ行ってメーカーと共同開発して販売しています。


——「久世福商店」は、御社にとって「サンクゼール」に続く2つ目のブランドです。このブランドを立ち上げた理由を教えて下さい。


久世 「サンクゼール」は、 "和"をテーマにした「久世福商店」と異なり、ワインやジャム、パスタソースなど、自社製造した"洋"の食品をメーンとしたメーカーブランドです。立ち上げた当初は多少苦戦もしましたが、軽井沢に出店したことを機に状況が好転し、色々な商業施設から声がかかるようになりました。ところが、20店舗を超えた辺りから引き合いが徐々に減っていき、それで別のブランドが必要だと考えるようになりました。そんなときに、シンガポールで行われた展示会でサンクゼールの商品を紹介したところ、「もっと日本らしいものはないのか」という意見をたくさん頂きました。海外では和食文化が流行り出していたのです。そこで、すぐに「久世福商店」の構想を練り上げて宿泊先のホテルから日本にいる幹部にコンセプトを伝え、準備に取りかかりました。


——かなりの数の商品がありますが、一体何種類くらい取り扱っているのでしょうか。


久世 今はオリジナルの商品も含めて約1100アイテムです。これでもだいぶ絞り込んだ方で、最初は2500アイテム取り扱っていました。




——直営とフランチャイズの両輪で店舗展開を進めています。ブランドを作った当初からフランチャイズも視野に入れていたのでしょうか。


久世 最初は、初年度3店舗の出店を計画していました。ところが、出店後の反応が予想以上に良く、自分達だけですべての引き合いに応えるのは資金的にも人材的にも無理だと思いました。同じタイミングで、イートスタイルという九州・中国地方などで多数の外食店をやっておられるメガフランチャイジーからアプローチがあり、それでフランチャイズも並行して進めることにしました。1号店は2013年12月、幕張新都心でオープンし、現在、「サンクゼール」とのダブルネームを含め、118店を展開しています。「サンクゼール」単体では現在26店展開しています。


ジャム販売が好調で順調なペンション経営をやめる


——サンクゼールは最初、ペンション経営から始まったそうですね。


久世 私は大学卒業後に入社したダイエーを1年で辞めた後、父が経営する業務用の卸問屋の営業を手伝っていました。そこで売上が低迷する2月と8月に備え、ペンションとリゾートを開拓することを思いつきました。それでスキー場に頻繁に出入りするようになり、すっかりペンションに魅了されてしまいました。卒業旅行でアメリカやヨーロッパを回ったときに、向こうの人々の自由なライフスタイルに感銘を受けていたこともあり、 「自分らしく生きよう」と3年で会社を辞めて、1975年に斑尾高原でペンションを開業しました。食事にこだわったり、オフシーズンは野尻湖のリゾートと組んでテニスやヨットスポーツなどで集客したりしたおかげで、とにかく繁盛しましたね。


——ペンション経営が順調な中、どうして食品の販売に乗り出したのでしょうか。


久世 繁盛し過ぎたのがかえってよくありませんでした。家族ほったらかしでペンション経営に夢中になってしまい、その結果、妻が実家に帰ってしまったのです。話し合いの末、何とか戻ってきてもらえたものの、その時にペンションをやめる約束をしました。ただ、いきなりやめたら、収入がなくなってしまいますので、次にやるものが決まるまで、若干の時間の猶予をもらい、色々なことを試しました。その中でうまくいったのが妻の作った手作りジャムの販売でした。甘さ控えめで無添加のジャムの評判はとても良く、予想以上の売れ行きだったため、ペンションをやめるのと同時に思い切って会社を作りました。最初は近隣のペンションやホテルのお土産コーナーに卸していましたが、それだけだとオフシーズンの販売チャネルがなくなってしまいます。それで徐々に営業エリアを広げ、「サンクゼール・ワイナリー」の直営展開も始めました。結局、ペンションをやっていたのは6年程でした。


——1万5000㎡の広大な敷地に、ジャム工場やブドウ畑、ワイナリー、レストラン、チャペルなどとともに本社を構えています。


久世 旧三水村の誘致を受けて、1988年に竣工移転しました。ペンションをやめた後に、新婚旅行代わりに訪れたフランスのノルマンディー地方で見たような、美しい田園風景の中にあるワイナリーや田舎に佇むレストラン、そこで美味しいワインを飲みながらゆったりと過ごせるような世界観を具現化しました。


——今後の事業展開について教えて下さい。


久世 店舗については「久世福商店」を軸に、今後も増やしていきます。加盟店募集も進めていきますが、本部だけが儲けるのではなく、加盟店もしっかり利益を上げられるようにしていきたいですね。商品については引き続き地方の良質な商品を発掘する一方で、自社商品の開発にも力を入れていく予定です。自社製造商品は利益率が良いので、その分価格を引き下げて消費者に還元したいと思っています。

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