出店立地に合わせて商品単価を8段階に分類コロナ禍でも影響軽微、直近2カ月は昨対越え/コメダホールディングス/北川 直樹 取締役


コメダホールディングス

愛知県名古屋市

北川 直樹 取締役(50)


大手カフェチェーンの「珈琲所コメダ珈琲店」(以下:コメダ珈琲店)は、コロナ禍にありながら業績を早期に持ち直し、今年10月の既存店卸売売上高は、前年同月対比で101%を記録した。他の飲食業、またカフェチェーンが苦戦を強いられる中、なぜ同社だけ堅調なのか。同社の出店開発を管掌する北川直樹取締役に理由を聞いた。

(※2021年2月号「FC本部インタビュー」より)



北川 直樹 取締役(50)

Profile きたがわ・なおき

1970年5月生まれ、三重県出身。四日市大学卒業後、富士電機創設株式会社を経て、株式会社コメダに入社。店舗での営業経験を積んだ後、営業部門及び開発部門の責任者を務め、開発本部長、取締役に就任。現在にいたる。

――飲食業が軒並み苦戦している中、コメダ珈琲店も一時は売上打撃があったものの、今ではコロナ以前と同等まで持ち直していると聞きました。


北川 既存店ベースの昨年同月対比の卸売売上高でいうと、3月が90%で、一番影響の大きかった4月が53%でした。5月以降は反転して71%、6月以降も85%、89%、92%、そして9月と10月は101%まで戻ってきました。実は9月に新商品である「コメ牛」というバーガーを出しました。この商品はコメダらしいボリューム感のある「にくだく」「だくだく」でどのサイズもずっしりとした重量感があり、食べ応え十分です。インパクトもあったことから思いのほか大ヒットし、発表後すぐに欠品になりました。


――新商品のヒットも寄与したわけですね。


北川 ほかにも、加盟店への支援の一環として「ミニシロノワールキャンペーン」を9月11

〜15日で行いました。これはお客様がドリンクを1杯注文していただければミニシロノワールを半額で提供し、残りの半額分を全部本部が負担するといった取り組みです。そしてこのキャンペーンの効果を最大化するために、テレビCMも打ちました。コメダの52年の歴史の中でテレビCMを打ったことはなかったのですが、「遠くのお出かけより近くのコメダ」をキャッチフレーズに多くのお客様にご来店いただけました。



▲看板商品の「シロノワール」

――コロナによってカフェマーケットの動向も変わってくるのではないかと思いますが、その点はどのように考えていますか。


北川 実際に外食は今、皆地方や郊外へという流れになり、中心部は空洞化するのかという話もあります。しかし私の見解では、当社は元々郊外でやってきましたが、だから郊外に力を入れていこうとはまったく考えていないです。むしろ都心部が空いてくれば物件も安く手に入りますし、逆の発想もあるのかなと思っています。


――コロナによって都心部の優良物件がいい条件で入るようになると。


北川 物件の開拓についてはこれまでも全方位的に行っていましたが、都心部で出店したいと思っても賃料が高くて出られなかった場所もあります。たとえば東京で言うと、23区内の山手線内側などです。


――都心部に人が戻らない状態では、出店しても苦戦するのではないでしょうか。


北川 確かに都心部は通常売上の90%まで戻っていません。しかしちゃんと店舗が生き残れる数字にはなっていて、閉店を考えるレベルではなくなってきています。残りの10%程度をどう埋めるかはお店の営業努力もありますが、一方で見方を変えれば90%で成り立つ物件にすればいいわけです。当社でも新しい出店条件、デザイン、モデルを考えています。


――90%で成り立たせるためには固定費の削減が不可欠です。たとえば賃料をよりシビアに見たり、賃料に合わせた事業計画を組むというイメージでしょうか。


北川 いえ、賃料から売上想定を出さず、あくまでもその立地でいくら売れるかという売上想定が一番に来ます。その上で、逆算して賃料の上限を決めます。もちろん、家賃の交渉もしますが、この時点で条件が合わない場合はすぐに諦めます。そしてそれぞれの立地に合わせて、当社では提供する商品の価格も8段階から選択します。このように、同じ商品でも提供単価を変えることで、出店の幅はだいぶ広がると思っています。


――確かに事前に売上と経費の数値を細かく擦り合わせていれば、出店後の利益のギャップも起こりづらい。


北川 当社の店舗は約97%がFCですから、そもそも撤退をさせたらダメなわけです。出店立地に応じて商品の価格帯を分けることで撤退が減っているというよりかは、元々の出店に対する当社の考え方が浸透した結果、撤退がほとんどないという言い方が正しい。


――オーナーにとっては1億円ほどの投資になるわけですから、加盟に際しては慎重にならざるを得ない。出店まで本部がサポートできることとして、何がありますか。


北川 当社は50年この商売をやっていて、これまで色んな出店の仕方をして失敗も経験してきました。その上で、「ここならいける」というノウハウを持っている。たとえば売上予測については計算式を持っていて、ハードとソフトの要素と統計データに基づいて既存店を点数化し、それを新しい物件に対しても当て込み点数化します。そしてその点数に応じて売上を予測しています。


ただこれはあくまでも参考値で、そのほかに開発のスタッフ及び開発本部の経験値に基づく数値で提案しています。つまり最終的には、机上のデータと私たちの見解での売上予測、そしてオーナーの見解というように、3つの視点で売上を予測し、ちゃんとオーナーに納得してもらっています。そのため、オーナーとの間でトラブルや訴訟になったことは今まで一件もありません。


▲今後は都心部での出店も加速

――コメダ珈琲店は昔から変わらぬブランドのイメージが強いですが、利用者の好みは時代の流れに合わせて変化している部分もあると思います。提供商品の開発についてはどのような対応をしているのでしょうか。


北川 これまではほとんど新商品を出さず、ヒット商品や定番商品の素材や提供方法をブラッシュアップする形を取ってきました。新メニューを増やせばオペレーションの負担にもなりますし、ロスも発生するためです。しかし、近年はそれだけではダメだと感じるようになりました。来店動機につながる仕掛け、それは間違いなく少し新しい新商品です。実はほんの数年前まで、当社には商品企画やマーケティング部もありませんでした。それが今の代表である臼井が社長に就任してから社内で部署ができ、以後、様々な企画ができるようになった。年間マーケティングカレンダーのようなものを作り、1年ほど前から構想して半年先のものを常に追いかけていく。その結果、今期は過去最高の商品数をリリースしています。


――たとえばどのような商品が挙げられますか。


北川 今期で言うと、看板商品のシロノワールです。季節ごとにバリエーションを増やし、今年2月にはゴディバとコラボしてゴディバのソフトクリームを提供しましたが、これが大人気ですぐに欠品になりました。ほかにもシロノワールに次ぐ大型デザート企画「クロネージュ」の投入、くまモンとコラボしたシロノワール企画など、来店動機につながる新商品を今後も企画していきます。定番商品のアレンジは当社としてもやりやすいですし、ブランドを毀損するものでもない。オーナーに対しては負担にならないよう、商品の採用を選択できるようにしています。


――コメダ珈琲店は様々な年代の利用者が多い上、リピーターも多い。その理由はどこにあると思いますか。


北川 お店をお店を綺麗にしてお客様を気持ちよく迎え、気持ちよく帰っていただく。QSC(※クオリティ・サービス・クレンリネス)という言葉がありますが、それは当たり前で、その当たり前を継続していくことが一番難しい。そしてそれをやった上で、スタッフ全員が常連さんの好みを覚えたり、そういった気持ちを持って接する。好みを覚えれば掛ける言葉も変わります。「いらっしゃいませ」ではなく、究極は「おかえりなさい」。下手すると何も言わなくてもいつものメニューが出てくる。常連さんとしてはいつも来ていると認知されることが嬉しいわけです。そしてそれが居心地の良さにつながり、自分の居場所のようになる。


――店舗が気付いてちょっと動いてあげると。


北川 FCですから勝手はできません。しかし、ただ言われたことだけを機械的にやれば上手くいくというのは、これからはもう通用しません。同じ商品を作るにしても、やっぱり作り手がお客様のことを想像してよく考えて、熱いものは熱く、盛り付け方一つとっても同じパーツでも美味しそうに盛り付けるようにする。こうしたちょっとした接客のクオリティの差がボディブローのように積み重なって、いいお店と悪いお店の差になっていると思います。


――こうした理念をFC店まで浸透させるのは、なかなか簡単ではありません。


北川 当社の代表は、口癖のように「QSCのABC」という表現をするのですが、このABCとは「当たり前のことを馬鹿にせず、ちゃんとやる」の略。そしてそれを実践するのはFCオーナー。オーナーがスタッフ一人ひとりに浸透させて動けるようにするのは、スタッフにお店の楽しさを教えるのが一番でしょうね。お客様を迎えることを楽しめるようになれば、自ずといい商品を出そうという気持ちが行動を変えることにつながる。


――あくまでも、基本に忠実ということですね。


北川 なぜうちに来てもらえるかといったら、商品力だけではない。商品は集客を左右するパーツの一つに過ぎない。我々が売っているのは商品プラスくつろぐ空間。そして空間提供サービス業という位置付けからすると、接客は切り離せません。


当社には「スマイル支援室」といった、コメダ流のおもてなしを推進する部署があります。どんな気付きをすればお客様が喜んでくれるのかをオリジナルで作っており、さらなる居心地の良さを提供するためのものです。おもてなしといっても、あまり畏まった対応だとお客様も入りづらいわけです。お客様にはそれぞれの空間があるので、そこに立ち入る必要はない。一定の距離感を保った上で、お客様がスタッフを呼びたい時にすぐ気付いて行けるのが一番いい。店を綺麗にし、気持ち良くお迎えしていい商品を早く出す。そして気持ち良く帰っていただく。それだけでいいのです。


▲全国各地でサードプレイスの役割を担う

――利用者のサードプレイスであると。


北川 着の身着のままで来てご利用いただける、限りなく日常に近い業態です。だからこそ、コロナ禍でもお客様に来ていただいている。


――コロナの影響は長期化しそうですが、コメダ珈琲店は今後も基本を踏襲していく形ですか。


北川 基本は基本としてしっかり行っていきますが、コロナによって外食にお金が落ちなくなり、お客様も元に戻らないという部分も事実。ですからその足りない部分を埋めるために、新たな来店動機を作る。そのためには付加価値を増やしていくことが方向性の一つです。たとえば他社とのコラボ。今年7月にオープンした店舗は大和証券さんとコラボし、「お金の未来を考える」というコンセプトで、店舗の一階部分をお借りして営業しています。ここは店内に入れば普通のコメダの店舗ですが、金融に関する書籍を豊富に取り揃え、客席ではタブレットで金融情報が手軽に見られるようになっています。


また、新業態として東銀座に「KOMEDA is □」をオープンしました。「お肉を休む日をつくろう!」を合言葉にすべてのメニューを100%プラントベース(植物由来)でご用意しました。美味しさと食べ応えのあるコメダらしいメニューを「いつものくつろぎ」とともに提供することで、サステナブルな社会の実現も目指していきます。今後も空間・店舗作りと併せて挑戦していきたいと思っています。



23回の閲覧0件のコメント