企業等にSNSリスク管理サービス提供し設立6年で東証マザーズ上場/アディッシュ江戸浩樹社長

アディッシュ東京都品川区)

江戸浩樹 社長

3月26日に東証マザーズに上場を果たしたアディッシュ(東京都品川区)。2014年に設立された同社は、企業を中心にソーシャルメディアネットワーク(SNS)の発展と同時に増加してきた不適切なコメントを発見し、相手に対して警告、非表示化等の対応を行うサービスを展開している。2019年12月期の売上高は25億100万円、営業利益は1億3000万円。コロナ禍の中、デマなどのリスク対策へのニーズも増えているという同社は、今期31億4700万円、営業利益1億8700万円、経常利益1億8000万円と、20%成長を見込んでいる。

(※2020年8月号「話題の会社を直撃」より)

江戸浩樹 社長(38)

えど・ひろき

1982年1月生まれ。石川県小松市出身。東京大学卒業後、2004年にアプリ企画開発のガイアックスに入社。同社でソーシャルメディアモニタリング事業、ネットいじめ対策事業、ソーシャルアプリ向けカスタマーサポート事業の立ち上げを主導。2014年、この3事業を分社化しアディッシュを設立。


今期売上高は前年比25・8%増31億4700万円見込む


─SNSは個人と個人、企業と個人の「つながり」を密接に結びつける役割を果たしていますが、比例して様々な問題も浮き彫りになってきました。


江戸 当社はこうした「つながり」から生じた課題を解決することをミッションにしています。


─具体的なビジネスモデルは。


江戸 企業や学校に対して、いわゆるインターネット上のコミュニティ対策をすることが当社の主な事業です。基本的なモデルは一緒なのですが、アプリやサイトを運営する企業向けとしては、利用者からの多岐に渡る問い合わせに対し、企業に変わって、電話やメール、チャットを通じて対応する「ソーシャルアプリサポート」や、SNSへの投稿を24時間体制でモニタリングし、不適切な投稿が発見された場合に、注意や報告、警告、非表示化などの対応をする「インターネットモニタリング」の2つが大きな柱です。


─サービスの収益構造は。


江戸 基本的には企業との年間契約ですが、対応する件数の波がありますので、1か月ごとの従量課金を採用しています。現在、300社以上に採用していただいています。


─学校向けのサービスは、パイオニアとして知られています。


江戸 「スクールガーディアン」というサービスですが、これはいわゆるネットいじめの可能性がある書き込みや、インターネットでの個人情報流出をモニタリングして生徒指導に生かしていくコンサルティングサービスです。


─ ネットの監視サービスとしては、ソーシャルサービス会社も行っていますし、専業の上場企業ではイー・ガーディアンはじめいくつか競合するところもある。しかし、学校向けにサービスを展開している企業は珍しい。


江戸 当社がこのサービスを展開するようになったのは、ある都市の高校生がネット上で誹謗・中傷を受けて、自殺してしまったというニュースを見たことでした。既に企業向けのモニタリングを行っていましたので、そのモデルを生かせば、こうしたネットいじめを抑制できるのではと、考えたのです。しかし、具体的なノウハウがなかったため、都内の女子校と連携して、半年以上かけてシステムを構築しました。同様のサービスはもちろん他社でも行っていますが、私立校に限って言えば導入している90%に当たる240社校以上が当社のサービスを使用していただいています。


─他社と比較して自社の強みは。


江戸 いくつかあるのですが、まずは、顧客企業のサービスの規模に合わせて迅速に対応できることです。それは全て自社開発を行っているからで、優良な人材を確保していることにあります。当社はインターネット事業経験や、豊富な知識を持つスペシャリストを有しています。彼らがサービス提供開始前に、顧客企業のニーズと運用体制の懸け橋となるようコミュニケーションを密にとっていきます。これにより、顧客企業が考えるサービスと合致したものを提供できるのです。また、自社で開発したシステムにより業務スピードを向上させていることも大きい。


─その分人材の確保と開発費の負担は大きいのでは。


江戸 研究開発費に関しては、連結売上高に占める割合は2018年には3・2%、2019年は2%と多額の投資をしてきました。今後も継続して研究開発費には3%程度を維持していきたいと考えています。


2014年に事業部ごと独立果たす


─SNSアプリ開発等を手掛けるガイアックスの社内ベンチャーとしてスタートしていますが、もともと東京大学ではバイオ研究室に所属していたとか。


江戸 今と全く畑違いの分野で研究していました。進路を決めるにあたり、そのまま研究者の道へ進むという選択肢があったのですが、一方で、将来は起業したいという思いがぼんやりとありました。ガイアックスに就職したのは、これまでお世話になっていた何人かの人から、「これからはウェブの時代だから、ウェブベンチャーの道に進むべきだ」と背中を押されたからでした。


─入社したガイアックスで、現在のビジネスモデルを事業化しました。


江戸 いわゆる社内ベンチャーですね。2007年にまず、投稿監視サービス、その後、学校向けサービス、カスタマーサポート代行サービスと3年の間に立ち上げました。


─独立を果たしたのは2014年でした。


江戸 事業規模が徐々に大きくなったこともあり、事業部の仲間とともに分社化という形で独立を果たしました。ガイアックスという会社はユニークで、社内で立ち上げた将来有望な事業を独立させるカーブアウトという手法を採用していました。当社もその一つでした。


─ベンチャーキャピタルから資本調達するのと同じイメージですね。


江戸 当初はガイアックスの連結対象だったのですが、2018年に連結対象外になりました。


BPO市場規模は約2兆7000億円

MaaS・フィンテック分野にも注力

─御社の事業領域にあるマーケットはどのくらいあるのですか。


江戸 当社の事業はBPOの一つだと考えています。そう考えれば、2018年のBPO市場は2兆4478億円で、2022年には2兆7246億円にまで拡大するといわれています。この一部が当社のターゲットで、強い分野で勝負していきたいと考えています。


─SNS市場も右肩上がりです。


江戸 日本におけるSNS利用者数は2020年には7937万人と鈍化しつつも毎年増加しています。その分今後も当社の事業領域も広がっていくでしょう。


─顧客にはいわゆるスタートアップ企業も多い。


江戸 当社は大企業だけでなくスタートアップ企業両方にサービスを提供しています。スタートアップ企業に対しては事業規模に応じて低価格でサービスを提供してきました。こうした企業も規模が大きくなってきました。中には上場を果たした企業もあります。比例して当社の売上も拡大しています。


─ 大企業の顧客もアプリに関して、ビジネス領域を広げています。


江戸 ナショナルクライアントも新たなビジネスを展開することで、高単価の案件が増えるでしょう。当社のビジネスモデルは、対応件数×単価で売り上げが積みあがっていくストック型ですので、安定的な成長が見込めます。


─新しいビジネス領域として、全ての交通手段をワンストップで決済まで提供できるMaaSやテクノロジーを活用した金融サービスのフィンテック分野にも力を入れていきます。


江戸 MaaS関連では、複数の移動手段が連携され、決済まで行うケースがあるため、問い合わせの対応が高度化しています。フィンテック同様、市場規模は急激に拡大していますので、今後の有望市場といえるでしょう。


─2020年12月期の売上高は前年比25・8%増の31億4700万円を見込んでいます。


江戸 新規顧客はネット経由か紹介がほとんどなのですが、上場を機により販管費にも投資を進めていく考えです。これにより来期も20%以上の成長を目標に事業を進めていきたいと考えています。


0回の閲覧

ビジネスチャンス

次なる成長を担うすべての起業家を応援する起業&新規事業の専門情報誌
 

© 2003-2020 株式会社ビジネスチャンス