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  • ビジネスチャンス編集部

ビジネスチャット・メッセージリンクサービス主軸 取引社数は前年比約97%増の2786社に拡大

AI CROSS (東京都港区)


10月8日、東証マザーズに上場したAI CROSS(東京都港区)は、ビジネス効率をアップさせるためのビジネスチャット・メッセージリンクなどのサービスを提供する。昨今の「働き方改革」というテーマ性にもマッチし、当日終値は、初値を22%上回り、ストップ高の2200円となった。(※2020年2月号より)



原田 典子 社長

はらだ・のりこ

1998年慶應義塾大学経済学部卒業。ドイツ系ソフトウェア企業、SAPジャパンを経て、システム開発ベンチャー企業に入社。同社アメリカ法人設立のため渡米。2015年3月より現職。



アメリカ赴任中の体験が起業の原点


2019年12月期の通期売上は、13億2900万円。取引社数は、前年度の1418社から96.5%増の2786社へ増加している。

「テクノロジーでビジネススタイルをスマートに」をテーマに掲げる同社のサービスは3つ。大勢の顧客に一斉に送信できるメッセージサービス「AIX Message SMS」、紙・電話・メールから進化したSNSによるビジネスチャットサービス「InCircle」、人事部業務効率化・生産性向上を支援する「AI Analytics」だ。

同社の原田典子社長は、上場企業としては、まだ少数の女性社長としても注目を集めている。

原田社長は1998年、慶應義塾大学卒業後、ドイツ系ソフトウェア企業SAPでテクニカルコンサルタントとして勤務した後、2000年にシステム開発ベンチャー企業に入社、アメリカ法人設立のため渡米した。駐在中に結婚・妊娠を経験したことが、現在のビジネスモデルを立ち上げる遠因となった。

「アメリカでは当時、フルタイムでの在宅勤務、子育てしながら働く人など、一人一人の価値観やライフスタイルに合わせた勤務形態が一般化していました。そのために企業もチャットやSNSを活用して、業務の効率化や合理化がなされていました」

2011年に帰国後、モバイル事業部の立ち上げに参画、「AIX Message SMS」「InCircle」を相次いで発表した。2015年には同事業部を子会社化しAI CROSSを設立、社長に就任した。

「日本のビジネス効率化は、アメリカのみならず先進国の中でも、まだまだ進んでいないのが現状です。今後、労働人口の減少や、多種多様な価値観やライフスタイルへの対応が急務の中、テクノロジーによって業務の効率化や向上をサポートしたかった」

起業によって事業のスピードアップと社員の意識向上を図ったものの、赤字のまま独立したため、開発資金を調達することが急務だった。

「ベンチャーキャピタルを少なくとも100社以上は訪問しました。心が折れそうになったこともありましたが、翌年、ようやく資金調達に成功しました。同時にオリンピック前にはIPOしたいと考えました」

親会社が警察向け不正防止システムなどを提供していたため、大企業水準の技術力は持っていた。顧客開拓はその技術力をアピールするとともに、「あえて女性だけのチームを作り、営業を行いました。物珍しさも手伝ってウケは良かった」という。

設立当初は導入企業が161社に過ぎなかったものの、2016年には414社、2017年は1048社に増加した。2018年には1418社になり、晴れて完全独立を果たし、IPOへ加速させたのだった。


AIによる分析で離職防止を支援



「AIX Message SMS」管理画面

同社の「AIX Message SMS」は、メッセージサービス分野での国内シェアはナンバー2の

約25%を占め、生損保・証券・公共分野ではトップ。ドタキャン防止、安否確認、決済など多彩なソリューションを業界・企業ごとに提供、「低い解約率によって安定的に売上を蓄積させています」

「InCircle」は、ITリテラシーに依存しない誰でも使える利便性で、月次解約率0.4%を誇り、こちらも収益のストック化に成功している。「官公庁や金融、医療機関など高いセキュリティが求められる企業を中心に導入されています」という。

「AI Analytics」は、チャットデータを複合的にAIで分析し、学習された離職傾向データをもとにAIエンジンが離職の可能性を判定する。「離職リスクの可視化によって、社員の適材適所を促し離職防止を後押ししています。将来的には、データを用いた人員配置の提案や、社員の適性診断を付加価値のあるサービスとして提供したいと考えています。このサービスの営業利益率は現在10%程度ですが、今後は高めていきたい」

各サービスに高い技術を採用しているのが同社の強みだ。9つもの特許を取得していることがそれを裏付けている。IPOによって調達した資金で、より高度な技術開発が可能になる。

同社では今後、3つのインフラサービスから得られるデータを分析し、新たなサービスを見込んでいる。

「今後は、サービスのパッケージ化によって、横展開を考えていきたい」例えば、蓄積データを生かした「幹部候補生の早期発掘」や「効率的なチーム構成」「社員の健康状況の把握」といった領域への拡大が期待できる。

「ひとつひとつのサービスに関しても、ビジネスチャットは、5Gによって利便性をさらに高めるなど、進化させていきます。当社は設立以来、コミュニケーションのインフラ作りから、顧客基盤の構築、サービス基盤作りとステップを踏んできました。上場を機に新たな事業領域に踏み出していき、更に企業の働き方改革を後押ししていきたいと考えています」

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