ネット通じた葬儀場、 墓石紹介で年商25億円を達成、増加する「ITシニア」で伸びしろ大きく

鎌倉新書 (東京都中央区)


清水 祐孝 社長(55)

しみず・ひろたか

1963年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学を卒業後、証券会社勤務を経て1990年父親の経営する株式会社鎌倉新書に入社。同社を仏教書から、葬儀や墓石、宗教用具等の業界へ向けた出版社へと転換。さらに「出版業」を「情報加工業」と定義付け、セミナーやコンサルティング、さらにはインターネットサービスへと事業を転換させた。



葬儀会社や石材店、仏具店のネット紹介サービスで、2018年1月期に17億900万円を売り上げたのが鎌倉新書(東京都中央区)だ。シニア世代のネット利用率の上昇などを背景に増収を続けており、前期2019年1月期は売上高25億300万円(連結)を達成した。事業成長の要因、そして今後のエンディング産業について、清水祐孝社長に話を聞いた。



2017年に東証一部上場果たす

ウェブ事業は30%超で成長


——鎌倉新書は元々、仏教関連書籍や葬儀、お墓事業関連のビジネス誌を発行する出版社でした。


清水 父が創業者で、私は事業を引き継ぐために入社した数年後、ネットの将来性の方が可能性は広がると考えました。そこで2000年から全国の葬儀社や葬儀マナーなどに関する情報サイト「いい葬儀」をスタートさせました。


——現在のネット紹介サービスで成長し、その後2015年に東証マザーズ、2017年には東証一部に上場を果たしました。


清水 現在の主力事業は、 「いい葬儀」 のほか、 「いいお墓」 「いい仏壇」などのネットマッチングサービスです。これはサイトを見て連絡したユーザーに、現在の状況や希望エリア、予算に合わせて適した葬儀会社や霊園、仏具店を紹介するというビジネスです。


——収益モデルはどのようなものですか。


清水 提携した事業者にユーザーを紹介し、成約した後で手数料をもらう成約課金モデルです。


——年間の紹介件数と成約率はどのくらいですか。


清水 3つの事業合わせておよそ4万件で、そのうち、葬儀で40%、お墓で20%程度が成約に至っています。


——株式上場以降も売り上げは年々成長しています。ウェブ事業では、2017年1月期が前年27%増の11億5100万円だったのに対し、2018年は33%増の15億2900万円に伸長しています。


清水 2019年1月期も、23億3200万円と前期からプラス52%の実績となりました。


——現在、同業他社もネット葬儀紹介サービスに続々参入しています。競争も激しくなってきていますが。


清水 他社が値段を全面に押し出しているのに対して、当社はネットを入り口にして、電話でユーザーのニーズを聞き出しながらコンサルティングを行います。当社は自前でコールセンターを持ち、24時間ユーザーからの電話に応じる体制を整えています。これは葬儀を選ぶユーザーにとっては時間に余裕がない場合が多いためです。


——コールセンターでは、最適な提案をユーザーに行える担当者のスキルが必要になります。


清水 確かに、メール対応で済むような他のインターネットビジネスと比べてヘビーです。だからこそ自前で持つ必要がありますし、人材を教育していく必要があるのです。


——今後のビジネス展開は。


清水 ここ数年はお墓事業に経営資源を投入してきました。しかし3つの事業を比較すると、市場が大きく、伸びやすいのが葬儀です。お墓と仏壇は家族に一つでも、葬儀は必ず一人一回行いますから。ですから今後は、葬儀もより伸ばしていきたいと考えています。


時代に合わせた事業展開

新領域は資産と相続


――御社が事業ドメインを置くエンディング業界は、高齢者人口の増加によって広がりを見せています。関連事業も含めると、葬儀関連ビジネスの市場規模は1兆5000億から1兆8000億円と言われています。


清水 年間の死亡人口は、父が経営するこの会社に私が入った1990年辺りでは80万人ほどでしたが、今では約130万人になっています。ただ葬儀の単価も1件あたり100万円ほどと、以前と比べると縮小しているのが現状です。


――市場規模の拡大と反比例して単価は下がっているというミスマッチの中で、どのような成長戦略を描いていますか。


清水 成長の根拠としているのが、インターネットを使って葬儀業者や霊園を探す人の増加です。葬儀マッチングであれば、当社を含め同様のサービスを利用して葬儀を行うのは、まだ市場全体の3%ほどです。スマートフォンやPCを使いこなすシニア世代も珍しくなくなり、当社の事業にとって強い追い風になると見ています。


――具体的にはウェブ利用層はどれくらいにまで拡大すると考えていますか。


清水 ウェブのシェアは、少なくとも10%くらいには伸びていくのではと考えています。その根拠にあるのは、ウェブを使いこなすシニア層の増加だけではなく、時代の変化によって、人づてなどで葬儀業者を探すのが難しくなっているということも見逃せません。


――確かに地方から都市部に移り住み、親戚付き合いや近所付き合いが希薄であれば、いざ親族が亡くなった際に葬儀を手配するのも簡単ではないでしょう。


清水 墓地も、先祖代々の墓を継いでということがなくなれば、新たに探す必要があります。檀家やお墓の制度は、人が移動しない時代にできたビジネスモデルです。東京では10世帯のうち8世帯は檀家に入っていないという話もある。それでもどこかに安置し、手を合わせる必要があるのは変わりません。


――既存の事業が大幅に成長している中、新たなビジネスの開拓にも力を入れています。


清水 その一つが、税理士・司法書士の紹介です。これまでも葬儀後に「主人の資産を申告したほうがいいのか」といった相談を受けることがありました。新たな事業の種になると見ています。


――葬儀の在り方も、時代とともに変化してきています。


清水 お墓関連事業ではありますが、樹木葬など現代のニーズに即した新たな提案も行っています。超高齢化社会の真っただ中にいる今、悩みや課題はある。この中からビジネスとして成立する領域はどこかを、見極めていく必要があるでしょう。

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