「サービスのコンビニ」目指しメニューを拡充、世界6ヶ国で約650店を展開
ミスターミニット
(ミニット・アジア・パシフィック:東京都台東区)

Profile さこ・しゅんすけ
1985年、福岡県生まれ。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)社会学部卒業後、三菱商事に入社。後にマザーハウスに転じ、2013年にミニット・アジア・パシフィックに入社。2014年4月、29歳で同社社長に就任。
靴や鞄などの修理、合鍵作成、時計の電池交換など、さまざまな生活関連サービスを行「MISTER MINIT(ミスターミニット)」が、満を持してフランチャイズオーナーの募集を開始した。“サービスのコンビニ”を合言葉に、メニューの拡充化を進め、さらなる店舗網の拡大を目指す。陣頭で指揮を執る迫俊亮社長を直撃した。
60年以上の歴史をもつ
老舗ブランド
——駅やデパート、商業施設の中でよく目にする「ミスターミニット」ですが、もともとは海外で生まれたブランドだそうですね。
迫 ご存知ない方もいるかも知れませんが、実はベルギーで生まれたブランドです。1957年にヒールの修理屋としてスタートし、日本には海外支社の一つとして1972年に上陸しました。我々、ミニット・アジア・パシフィックとしては2006年にMBOで独立し、現在は国内の他、オーストラリアやシンガポール、マレーシアなどでも独自の店舗展開を進めています。店舗数は日本の317店を合わせ、約650店になります。売上高は連結ベースで約180億円。本部とは商品開発や原材料の仕入れなどで協力関係にあります。
——これまでは直営店のみでしたが、今年2月から本格的にフランチャイズ募集を開始しました。狙いについて教えて下さい。
迫 海外ではだいぶ前からフランチャイズに力を入れていて、例えばオーストラリア・ニュージーランドではすでに280店舗以上を出店しています。また、シンガポールやマレーシアでも店舗を増やしているところです。これを受け、国内でも一部でFCを実施してノウハウを蓄積し、今回の本格募集に至りました。
——海外でのフランチャイズ展開がうまくいっている理由については、どのように分析されていますか。
迫 仕事に対するモチベーションは人それぞれで、「お金を稼ぎたい」と考える人もいれば、「ある程度お金を稼いだら、あとは趣味を充実させたい」という方もいます。こうした多様な価値観に対応できる柔軟性のあるビジネスとして打ち出していることが、うまく受け入れられたのだと考えています。例えば、オーストラリアでは、一定期間集中的に仕事をした後で、数カ月かけて趣味の旅行を楽しんでいるオーナーがいます。シンガポールやマレーシアでも同じやり方でうまくいっているので、これは日本でも行けるだろうと判断し、満を持してフランチャイズ募集に踏み切ったというわけです。
——靴の修理業からスタートしたそうですが、現在はさまざまなサービスを提供されています。
迫 今の移転で15種類のサービスを提供しています。靴修理の市場規模は約300億円で、これはずっと横ばいの状態が続いています。安定ていると言えなくもないですが、すでに圧倒的なシェアを獲得している我々は、これ以上この市場だけで成長することはできません。 そこで「サービスのコンビニ」を掲げ、メニュー開発を進めているのです。サービスを増やせば色々な場所に出店しやすくなるというメリットもあります。
——どのような基準でサービスを増やしているのでしょうか。
迫 既存サービスとの親和性はもちろん大事です。まったく畑の違うものを採り入れても、店舗に落とし込めませんし、技術を習得するのも困難です。あと単独の市場として成り立っているかどうかも重要な判断基準です。例えば、最近「はんこ・印鑑」の販売を新たに始めましたが、これはすでにきちんと市場が確立されていて、店舗への落とし込みがすんなりと行くと判断したからです。しかし「傘の修理」を考えた場合、既存サービスとの親和性はともかく市場性は見込めそうにないので、サービスとして採り入れることはありません。
——サービスの種類を増やすことは顧客満足度を高めることができる一方で、店舗の負担増につながる可能性もあります。特に技術を習得するのに時間がかかったりするのではないでしょうか。
迫 負担が増えないかと言えば嘘になります。ただ新たなサービスを採り入れる場合、事前にどうやったらオペレーションをシンプルにできるか十分に検証しているので、個人によって差はありますが時間をかければ誰でもできるようになります。店舗のスタッフではどうにも対応できない注文が入った場合は、2年前に設置した社内工場で対応するようにしています。こちらでは月間1万5000件の注文を捌いています。
また、サービスの拡充に合わせて店舗のサポートが十分にできるようにSVの数を4倍に増やし、導入のメリットについて納得ゆくまできちんと説明するようにしているので、今のところ反発はありません。
——フランチャイズのビジネスモデルについて教えて下さい。
迫 加盟金は200万円で保証金は50万円、ロイヤリティは月額5万円と売上の5%です。売上は㎡ではなくスタッフの頭数や扱うサービスの種類によって変動します。1人当たり年間2000万~3000万円くらいが平均で、日に5名のスタッフを投入している店舗は年間で1億3000万円の売上を上げています。
——「ミスターミニット」は駅でよく見かけるイメージが強いのですが、他にはどんな場所に出店しているのでしょうか。
迫 実はエキナカにあるのは全体の3分の1程度で、あとは商業施設とデパートがそれぞれ3分の1ずつあります。さまざまなサービスが提供できるようになったので、今後は路面も積極的に出していきたいと思っています。
——加盟対象は。
迫 独立開業希望の個人や、すでに時計店やハンコ店、スマホ修理店などを営んでいる方々から多くの問い合わせを頂いています。商業施設などや不動産をお持ちの方が、デッドスペースの有効活用のために加盟するというケースもあると思います。
また、社内からの独立も後押ししています。4月までに直営店の譲渡という形で、合計13名が独立しました。
——今後の出店計画についてどのように考えておられるのでしょうか。
迫 過去3年は年間20~30店ペースで出店しています。今後も同様のペースで、このうち10店舗くらいをフランチャイズで出したいと考えていランチャイズで出したいと考えています。一気に増やそうと思えばできなくもないと思いますが、量よりも質を重視し、1店1店しっかりスキルの高い店を作っていきたいです。手堅いビジネスなので一気に伸びることはありませんが、流行りがない分、一気にすたれることもありません。