「厨房機器リサイクル」 からのイメージ脱却、 飲食店の「揺りかごから墓場まで」支援へ

テンポスホーディングス 東京都大田区


森下 篤史 社長(72)

PROFILE もりした・あつし

1947年、静岡県生まれ。静岡大学卒業後、東京電気(現・東芝テック)に入社。業務用洗浄機メーカーの専務などを経て1997年にテンポスバスターズを設立。「オレ流」の「店長立候補制」「定年制度なし」などユニークな経営で知られる。

1997年、厨房機器のリサイクル事業のテンポスバスターズからスタートを切ったテンポスホールディングス(東京都大田区)は、不動産・内装・経営指南など業域を拡大し、2002年には東証ジャスダック上場を果たした。2011年には、ステーキのあさくまを傘下にするなど、積極的なM&Aを進め、今や連結子会社は14社、総売上高は300億円を突破した。それでも同グループを率いる森下篤史社長は、「1000億円企業」を目指し手綱を緩めない。創業から20年、新たなフェーズに入った森下篤史社長が描く青写真とは。

今期売上300億円突破

1000億円企業目指す

─グループ全体の売上高が300億円を突破しました。


森下 2019年4月期でいえば主力のテンポスバスターズ含めた物販事業が142億4400万円、ステーキのあさくまをはじめとする飲食事業が100億円を突破するなど、情報・サービス事業含めて各セグメントがいずれも伸長しました。来期は全体で売上高313億円を見込んでいます。


─厨房機器のリサイクル事業からスタートし、業域を拡大してきました。以前、売上高300億円が一つの節目と話していましたが。


森下 厨房機器のリサイクル事業は「実店舗での販売」、「営業マンによる直販」、「ネット販売」とこれまでこの3つの販売チャネルでやってきましたが、これからは「情報サービス事業」を重要セグメントとして力を入れていきます。


─情報サービス事業の一環として、昨年から飲食店経営の支援事業に力を入れています。


森下 外食市場規模は約25兆円と言われていますが、毎年約600軒が倒産します。中でも新規店の開店からの生存率は45%と言われています。居酒屋、ラーメン屋にいたっては3年で70%が閉店しています。飲食店経営は参入障壁が非常に低いため、多くの経営者は、軽い気持ちでスタートする。これが大きな問題だと考えています。


─経営に対するリテラシーが低い経営者が多いのでしょうか。


森下 飲食店を運営するためには様々な課題を克服していかなくてはならないのですが、彼らは課題に対する問題意識が低い。例えば今の飲食店はホームページを作って集客することが当たり前になっていますが、実際はそれすらできない経営者は多い。当社は飲食店の5年後の生存率90%まで引き上げることを目標に経営支援事業に力を入れています。


店舗のお医者さん「ドクターテンポス」始動

「安楽死」コースで再挑戦後押しも


─そのため「ドクターテンポス」という活動を行っている。


森下 これは当社グループが診断医・主治医、専門医を担い、総合的に支援していこうというものです。数字に基づく効率経営と、覆面調査による顧客満足の視点から店舗を診断します。集客と販促、これが飲食店の中心的課題です。現在、200名の社員を三カ年計画で、専門医にすべく教育に取り組んでいます。リアルとネットの融合、ハードとソフトの商品提供、この2本柱が「ドクターテンポス」です。


─具体的な取り組みは。


森下 ホームページ(HP)やSNSによる集客支援、POP作成、スタッフ教育といったものから、各飲食店の抱える課題について適切なアドバイスを行っていきます。


─実際の成果は。


森下 まだ当社スタッフの力量不足なのか、改善すべきものは多いです。例えば当社は、集客支援の一環としてお店のHPを無料で作るサービスを行っていますが、当初は「タダより高い物はない」と警戒するのか、受けてくれるところが少なかった。目を引くHPを作りには写真が重要です。しかし、それでさえ、自分でうまくできないという人が多い。こうした飲食店こそ当社がフォローしていかなくてはならないのですが。


─思い通りにはなかなかいかない。


森下 HPの写真の件については、自分でできないのならばプロのカメラマンにお願いしようとも思いましたが、金額が高くてそうそうお願いはできない。そこで、当社では、あさくまのメール会員顧客にメールを通じてお願いしました。会員115万人に向けて発信したところ、報酬は3000円程度だったのにもかかわらず、アマチュアカメラマン118人から応募がありました。今では1か月400~500件、年間5000件以上のHPを作っています。


─メール会員を利用することで副産物もあったといいます。


森下 一般の人でも、副業はもちろん、自由な時間で働きたい人が意外に多いということは発見でした。カメラマンだけでなく、会員顧客には多くのスキルを持っている人が大勢いる、今後はこうしたリストを通じて、何か新しいことができるのではないかと期待しています。


─「ドクターテンポス」には、安楽死」コースというユニークなメニューもあります。


森下 場合によっては、経営を続けるよりも閉店して出直しをした方がいいこともあります。その際、第二の人生をサポートしようというものです。具体的には、店舗の売却や業態変更。会社・従業員ごと売却するのか、店舗と従業員を切り離して売却するのかといった事業譲渡。閉店する際には、借入金の清算交渉、家主交渉、退店の際の物件紹介などを支援します。もう一度再出発したいという方には、当社グループに入って3~5年で再チャレンジする社員独立支援制度を用意しています。自己資金300万円を用意してもらい、当社が2000万円を準備金として提供します。


「ビリオンクラブ」を組織し

子会社5社を次々上場へ


─買収したステーキのあさくまが、6月27日に上場を果たしました。


森下 飲食店経営のノウハウを得るために、売上30億円規模の時に買収したのですが、おかげさまで100億円を突破しました。


─あさくまに続く子会社の上場も目指しています。


森下 今後、5年間で少なくとも3社、ゆくゆくは5社を上場させたいと考えています。キッチンテクノ、テンポス情報館、テンポスドットコム、テンポスバスターズ、プロフィット・ラボトリーと、当社には利益1億円を出す子会社、1億円を視野に入れている子会社が5社あります。この5社を上場予備軍として、「ビリオンクラブ」というものを発足しています。すでに、上場に向けた勉強会をスタートさせました。今後は各子会社の幹部、人事、管理部が一体となって上場に向けて準備を進めていきます。


─「1000億円企業を目指す」と公言していますが、グループ会社それぞれの成長戦略は。


森下 主力事業のテンポスバスターズは現在、58店舗ですが、6年間で100店舗体制にまで拡大していきたいと考えています。来年度には新規オープン3店舗を計画しています。また、市街地・駅近・100坪前後の小型サテライト店の出店も検討しています。そのうえで、買い取り営業の新規開拓で物流を2倍にする。また再生センターを2交代制にすることで、中古製品再生期間を2分の1にし、流通スピードを速めていきます。


─今年から中古機器のレンタルもスタートさせました。


森下 初年度売り上げは1億円、5年後売り上げ10億円を目指していきます。現在稼働している店舗を通じて、配送や設置、レンタル後のフォローが可能になります。レンタル終了後は自社で商品を再生し、リアル厨房機器販売のの店頭で再販することができます。


─厨房機器販売のウェブサイトも好調です。


森下 現在2万5000点を掲載しています。これまで営業に力を入れていなくてもウェブ上の問い合わせ窓口を作るだけで、昨年度は363件、売上高4000万円の実績がありますので、今後は5万店にまで増やしていきたいと考えています。


─厨房機器に特化したプラットフォーマーへの脱皮を図っています。今後は単体だけでなく、同業他社も巻き込んでいく計画ですか。


森下 既に中古の殿堂プロジェクトをスタートさせています。これは他社の商品を積極的に掲載していくものです。サイトオープンから1年間は掲載費無料、販売手数料を無料にして門戸を開放します。まだ参加企業は2社、掲載点数2万点ですが、今期中に50社の掲載申し込みを目指し、将来的には掲載店数2万5000点、100社を目指していきます。

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