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【移動スーパーとくし丸】「デジタル」のオイシックスと「人間力」のとくし丸だが、事業の方向性には共通性がある

公開日:2024.05.28

最終更新日:2024.05.28

※以下はビジネスチャンス2024年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

 とくし丸(徳島市南内町)は、全国のスーパーマーケットとFC契約を結び、軽トラックを利用して食料品や日用品の移動販売を行うビジネス「移動スーパーとくし丸」を展開している。同社は、四国・徳島でタウン情報誌事業を行っていた住友達也氏が2012年に創業。2016年にはオイシックス(現 : オイシックス・ラ・大地)が発行済株式の90%を取得し、子会社化した。現在、全国47都道府県で、約1200台の移動販売車が活動している。日常の買い物に不便を抱える高齢者を中心に約17万人が利用しており、2023年の流通総額は300億円だ。高齢化が加速し続ける現代日本にとって重要なネットワークとなっている。

Profile しんぐう・あゆむ
2003年旧オイシックス(現オイシックス・ラ・大地)に入社。EC事業部にてOisixのサービス開発・運用を経てM&Aや新規事業の立ち上げを担当。2016年より同社の執行役員と、とくし丸の取締役を兼務。2020年6月とくし丸の代表取締役社長に就任。

 

「本当に困ってる人」は毎回3000円購入

――「移動スーパーとくし丸」のビジネスモデルを考案されたのは創業者の住友さんですが、ありそうで無いビジネスです。
新宮 おそらく誰でも思いつきますが、誰もやってみようと思わないですよね。私の幼少期にあったような、アナログなビジネスモデルが今もあることに驚きました。私は2000年ごろからオイシックスでデジタルを活用したビジネスをしてきたので、これからの時代はデジタルでないとビジネスを作れないと思い込んでいました。しかし、とくし丸のビジネスモデルは全く真逆です。ただ、M&Aの交渉に入る前に、夏の暑い日に徳島で初めて販売車に乗せてもらった時、お客様が非常に喜ばれていることに感銘を受けました。買い物だけで人をこんなにも笑顔にできるのかと感動しました。そのうちに、とくし丸のビジネスとオイシックスが考えていることに共通性を見出して、我々でも経営の助けが出来るのではないかと思いました。
――両社の共通性とは一体どのような点でしょうか。
新宮 とくし丸とオイシックスは、どちらもリピーターを作り、決まったお客様に購入していただくサブスクリプション型のサービスです。お客様の利用状況に応じて最適化を図っていますが、そのための手法に関しては、デジタルの力を使って実現を目指すオイシックスと、ドライバーの人間力で実現を目指すとくし丸では、全く真逆であるうえターゲットも違います。ですが、事業の目指す方向に関して非常に共通性を感じました。
――御社の創業時、住友さんはかなり苦労されたようですが、どのようにしてその時期を乗り越えられたのでしょうか。
新宮 ポイントとしては、本当に困っている人のためのサービスにしなければ事業として安定しないことです。第一印象で困っていそうに見える方でも、実はそれほど買い物の必要性が無い生活状況の方もいますし、それほど困っていないと言う方が実際は非常に困っている場合もあります。例えば、お買い物の機会が週2回、1カ月に8回あるとして、本当に困っている方は、毎回2000~3000円ほど購入されますが、困っていない方は8回のうち、2回しか買わなかったり、購入していただいても数百円ということが多いです。効率性を担保するためにも、困っている方の元へ行き、会話をすることで何が必要かを聞き出し、商品を積み込むところから変えていくのが重要だと思っています。

将来には家電の販売も検討

――ただ今後は、人口減少によりスーパーそのものが減っていく可能性も高いです。
新宮 最低限必要な固定費を考慮すると、人口減少地域にあるスーパーは採算が合わなくなります。そうした理由で、村役場からお問い合わせをいただくことが最近では増えてきました。村に唯一あったスーパーが閉店したため助けてほしいといった内容の相談です。しかし当社でもそうしたご要望に充分に対応できていないエリアも多いのが実情です。買い物に不便を感じていらっしゃる高齢者の方にとって、時間365日同じ場所にお店が必要なわけではないと思います。お客様としては週に2回の買い物が出来れば良いのです。とくし丸は直接訪問することで、そうしたニーズに応えています。
――今後、御社のビジネスはどのように拡大していくのでしょうか。
新宮 買い物にお困りの方を一人でも多く減らすために、横に広げることに注力して販売車の稼働台数を増やしていきたいと考えています。また、ユーザーの方のご自宅へ伺った際の話ですが、刃渡りが手のひらほどに短くなった包丁を使われていたりします。その包丁で野菜を切るのは難しいのではないかと聞くと「使っているうちに小さくなった」と仰ったんです。ですので、包丁を買うことを提案してみると、新しい包丁を買うという発想が無かったと言われました。シニアの方の中には、だんだん昔できていたことができなくなり、不便なままで生活している方がいると目の当たりにしました。今では便利な掃除機や洗濯機などもたくさんありますが、それらの存在を知らずに、昔の不便な家電を使っている方は多いので、将来的にはそういったものを消費者の方に届けていきたいです。
――家電の販売にはニーズがあると思います。それらの販売はまだ行っていないのでしょうか。
新宮 現段階ではまだ実現できていませんが、これまでの実験結果から見て、非常に可能性のあるビジネスだと考えていますし、その結果、お客様が幸せになる確信があります。ですが、当社のメインのお客様は80代以上の方なので、年齢のこともあり、ただ売ろうとだけするとお客様の心のシャッターがガラガラと下がります。人間力を発揮し、どのようにお客様の生活に貢献できるかを考えることが、当社の進んでいくべき道です。

 

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