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【タニザワフーズ】独自の教育プログラムをもつ「タニザワ大学」で人材育成

公開日:2023.08.27

最終更新日:2023.08.27

※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

タニザワフーズ (愛知県岡崎市) 谷澤 公彦社長(48)

1997年に愛知大学経済学部を卒業後、株式会社名古屋銀行へ入行。02年にタニザワフーズ株式会社へ入社し、04年に取締役、17年に代表取締役副社長、18年に代表取締役社長に就任。22年からは一般社団法人日本フードサービス協会の副会長も務める。
加盟ブランド
ケンタッキーフライドチキン/吉野家/かつや/サーティワンアイスクリーム/びっくりドンキー/リンガーハット

 

 

 

 1975年からFC展開を開始し、現在94店舗を運営する国内最大級のフランチャイジー。チェーンストア理論をベースにしたその教育体制はいわば王道経営。独自に進化させた教育機関「タニザワ大学」を社内に持つ。

チェーンストアシステム講座でフランチャイズ理論を習得

―タニザワフーズさんと言えば、古くから教育体制を内製化されています。主にどのようなことを教えられているのですか。
谷澤 1つめはチェーンストアの体系的な勉強で、2つめは「3KM」です。3KMとは、人として成功していくための3つのK(個人・家庭・会社)のバランスをどう保ちながら自己研鑽していくか。会社からの要求は、会社のことばかりになりますが、それでは幸せにはなれません。家庭や個人をどうしていくか。どのようにバランスを取りながら成長させていくかといった話をしています。
 この2つは以前からやっています。一時期、オペレーション上の教育をしたらどうか、ホスピタリティ的なことを会社として教えたらどうかといった話がありました。サービストレーナーなど会社の教育の中に入れ込んだ時もあったのですが、ブランドが違うと求めるレベルが変わり、ばらつきが出てしまいました。
―社員の育成については以前より必要性を感じられていたと思いますが、体系的に始められたのはいつ頃からですか。
谷澤 今から15年ほど前に、人材開発部を立ち上げたのが本格的なスタートです。本部は実際の運営で必要なマニュアルや教育研修を仕組みとして提供し、そこに自社の社員を派遣します。ただし、あくまでもスタンダードオペレーションができる人材育成が本部の役割です。一方、フランチャイジーは、自社の理念の共有から教育をスタートさせます。そこが本部とフランチャイジーの違いです。当社の理念教育では、チェーンストア理論とキャリアプランから学んでもらいます。
―御社では、自社で「タニザワ大学」といった教育機関も設けています。
谷澤 タニザワ大学では教育カリキュラムを提供していますが、5年(年2〜3回)かけて実施する定期教育と、不定期で行う選抜教育の2つで構成されています。大学での教育は全社員が対象です。
―現在の社員とパート・アルバイトスタッフの割合は、どのようになっていますか。
谷澤 地域限定社員(正社員の雇用契約の中で地域限定、転勤はない)を含めると、正社員は126名で、パート・アルバイトは2464名です。ただし週1日、1日2〜3時間の人もいれば週5で働く人もいます。総数は2464名ですが、実際は不足しています。そこが課題ですね。
 今はなかなか採用ができず、出店計画にも影響が出ているほどです。クリエイティブライン(開発部門)からすると、オペレーションライン(営業部門)に確認しないと出店に踏み切れない状況です。
―採用で苦労されているというお話ですが、パートやアルバイトを社員に登用することは考えられないものですか。
谷澤 実際、そうしていかないと回らないのが現状ですが、まだ社員になる人が少なく、そこが当社の課題になっています。ただ希望者がいれば、面談をして内部登用していきます。
 対象となるのは店舗では時間帯責任者で、待遇はアシスタントマネージャー相当。正規雇用に切り替わることで役割の変更や報酬、キャリアの変更があります。本人にとってメリットがあれば、正社員になってくれると考えています。
 当社はケンタッキーフライドチキンのフランチャイジーを長年やってきました。従業員はKFCブランドに対して愛着を持っています。しかし、運営会社であるタニザワフーズにはどのような魅力を感じているのか。そこが今後の採用、社員登用のポイントになってきます。お店やブランドは好きだから長くやっていきたい。でも、社員としてやっていくのに何が魅力になるか。そこを従業員にしっかり伝えて理解してもらわないと、社員になってもらえないと思っています。

自己実現の技術を取得するプログラム「3KM」

正社員にこだわらず、地域やブランド採用にシフト

―最近になって、様々な働き方が定着しつつあります。
谷澤 これまでは、店長までやればよいと考えている人がほとんどでした。しかし今は、店長がすべてではありません。場所を移動したくないという人の絶対数が増えています。今後は、ブランドやエリアの中だけで仕事をするという選択肢を持つことが求められます。
 最近は、総合職で部長を目指す人は少なくなりました。地域でそれなりの暮らしができればよいという人が増えています。個々の将来のキャリアプランを考えてもらい、会社のキャリアパスに合う人を登用する形になっていくでしょう。ゆくゆくは正社員という区分はなくなり、地域採用、ブランド採用が主になっていくと思います。
―人材面での今後の課題としては何が挙げられますか。
谷澤 店長の上の職種であるエリアマネージャーのところで、考えが伝わりきれていないのが課題です。現場に回ると、店長以下にまったく情報が伝わっていないのです。コロナの3年間でそのギャップが大きくなり、考え方も変わりました。このタイミングで新たにどう伝えていくか練り直す時期に来ています。エリアマネージャーになった瞬間、スーパーバイザー的な指摘だけになっている人が少なくありません。それも業務の一部ですが、エリアマネージャーの仕事はそれだけではなく、エリアの競争対策責任者でもあるのです。
 またこのほかにも、身だしなみや言動、所作も根本から見直します。マネージャーができていないとパートやアルバイトに示しがつきません。ロールモデル像と自分のギャップを埋めるための研修を実施します。
 その次は挨拶。これも底辺からやり直します。昔でいう食堂、つまり個人経営なら問題なくても、チェーンストアはきちんと挨拶ができなければ成り立ちません。この点も基本ができていないと、アルバイトから「店長が…」と言われてしまいます。人は都合よく解釈するもので、身だしなみも「多様性」という言葉で崩れていくおそれがあります。まずは身だしなみとおしゃれは違うことから、教えていく必要があります。スタンダードを守らないとすべてが崩れかねません。FCビジネスはどこまでスタンダードを維持できるかに尽きますから。

タニザワ大学の人材育成のイメージ

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