• HOME
  • 記事
  • 【識者に聞く】ピラティスのルーツは機能回復のためのリハビリ

【識者に聞く】ピラティスのルーツは機能回復のためのリハビリ

公開日:2025.05.07

最終更新日:2025.05.07

※以下はビジネスチャンス2025年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

 ピラティスは、ドイツ人のジョセフ・ハベルタス・ピラティス氏(1883〜1967)によって考案されたエクササイズだ。第一次世界大戦の負傷兵のリハビリとして実施されたのがはじまりで、患者が寝たきりでも身体を動かせるよう病院のベッドを改造し、専用器具が作られた。これが後のピラティスマシンとなる。機能回復のために考案されたピラティスは、姿勢改善や肩凝り改善などの効果があり、近年は全く運動に縁のなかった層にも受け入れられている。また、芸能人やインフルエンサーの影響もあり、最近ではファッション性の高い習い事としても注目を集めている。

ウェルネス&ビューティの需要に合致し一躍ブームに

 2002年に設立したクラブビジネスジャパンは、フィットネス業界唯一の経営情報誌「Fitness Business」の発行をはじめ、セミナーやコンサルなどフィットネス経営に関する業務を手広く手掛けている。社長兼編集長の古屋武範氏は、 1985年からフィットネス業界に従事し、2000年には日本フィットネス産業協会の理事を務めた。そんな古屋氏に、現在ブーム到来中のピラティスについて話を聞いた。

隣の人と一定の距離感がある

ピラティス事業成長における好循環と悪循環
加盟希望者は本部の支援活動の幅と質に着目

--近頃、ピラティス業態のFC本部が急増しています。ピラティスが注目されるようになったきっかけを教えてください。
古屋 コロナの最中ですね。それまでの主流はホットヨガでしたが、コロナ流行をきっかけにソーシャルディスタンスが保て、清潔さが維持されているピラティススタジオに注目が集まりました。同じ理由でパーソナルジムも人気となり一気に広がりましたが、今はもう落ち着いています。その打開策の一つとして、パーソナルジムがピラティスを導入するケースも増えています。
--ピラティスのニーズはどういったところにあるのでしょう。
古屋 もともとリハビリのプログラムの1つですので、ケガや病気の予防や身体の不具合、姿勢改善などの目的で通う人もいます。しかし、それ以上に「綺麗になれる」「美しくなれる」といったウェルネス&ビューティーの感覚で通う人が多いのではないかと思います。
--このピラティスブームに乗って加盟検討する人も多数いますが、これだけ急激に増えると淘汰されるブランドも出てくると思います。
古屋 この間、一部のピラティスチェーンで起こっていたことを作図しました。良い本部は外側の天使のサイクルを循環していて、悪いところは内側の死の悪循環に陥っていることが分かりました。
 まず、コロナ下で本部は成長第一主義となり、投資家を付けて出店攻勢をかけました。投資家は店を出すことによって儲かるため、ピラティスが何なのかよく分からないまま出し続けるわけです(出店へのフォーカス)。ところが、出店ばかりに注力して人材育成をしないため、現場もお客さんにどう対応していいのか分からない(人材育成への圧力)。上からは営業成績のことばかりを言われチケットの販売などに勤しむわけですが、現場のインストラクターはそんなことをしたいわけではありません。それが不満になって退職し、次第に人材は不足していきます。そうなると、本来の業務ではなく人の採用、育成に携わらなければなりません。すると、既存会員の定着への取り組みができず、次第に会社の利益も減っていきます。これを死の悪循環と言っています。
--成長に繫がらない要素を循環しているわけですね。
古屋 一方、天使のサイクルを循環する本部は、お客さんとのやり取りの中でマニュアルを変えて、改善を重ねています。その結果、在籍が増えて、利益も増えて、出店や教育にできるWinWinのループができるのですが、ダメなところはそうなっていません。
--天使のサイクルを持続的に回し、成長していくために大切なことは何でしょうか。
古屋 大事なのは、バリューチェーンにおける支援活動です。本部として、採用や育成、プログラムの標準化やアップデート、DXや広告宣伝などを含めて、どこまで支援しているのか。また、ピラティスは医学に支えられているため、養成コースの先生に医学的知識があるのか、何を質問しても的確な返しをくれるのか、そういった見えないところが大事です。そのため、ジーの方にもそこを評価するように言いたいです。
--そのほか、ジーが着目すべき点はありますか。
古屋 3つあります。最も重要なのはプロブレムソリューションフィットといって、お客さんの期待や課題が指導サービスと合っていることです。これがセンターピンとなります。そして、このセンターピンを支える採用、育成、プログラムの標準化などの支援活動が担保できる仕組みになっているか。最終的にはビジネスモデルを構成する要素が、天使のサイクルを回るようになっているか。これら3つを評価するべきだと思います。あとは、自分が会員として通うことですね。
--今後、ピラティス市場はどのように変化すると考えられますか。
古屋 現在の相場は月会費で1.5~2万円ですが、市場は必ずコモディティ化するので会費も下がります。また、中途半端なところがなくなって二極化が進みます。生産性を高めて低価格を実現するブランドと、専門性を高めた高価格帯のブランドという形になっていくと思います。
--この人気はいつまで続くのでしょう。
古屋 あと2年くらいでブームは落ち着き、定着していくと考えられます。Googleのワード検索でチェックすると分かるのですが、パーソナルトレーニングは下の方に表示されますが、ピラティスは相変わらず高い位置をキープしています。良いブランドや良いインストラクターも多いので、ブームが落ち着いても消えることはなく、定着していくと思います。

クラブビジネスジャパン提供のもと編集部で作成

クラブビジネスジャパン
(東京都渋谷区)
古屋 武範社長(62)

次なる成長を目指す
すべての経営者を応援する
フランチャイズ業界の専門情報誌

フランチャイズ業界唯一の専門情報誌として、毎号さまざまな切り口をもとに新興本部から大手本部までをフォーカス。またFCを自社の新たな経営戦略として位置付け、中長期的な経営を目指す経営層に向け、メガフランチャイジーの情報も提供しています。

ビジネスチャンス
最新号
最新号                     急成長のピラティス市場を徹底研究            コロナ禍以降に急増              代表的ブランドを一挙取材
4月22日発売

ピラティスFC最前線~急成長市場の攻略法~

詳細はこちら

定期購読お申込み

記事アクセスランキング
次なる成長を担うすべての起業家を応援する
起業&新規事業の専門情報誌

“起業のヒント” が毎号充実! “ビジネスチャンス” の宝庫です。
すぐにでも役立つ独業・開業・転業・副業サポートの雑誌です。
資金をかけずに始められる新しいビジネスの紹介、FC、経営・会社運営のノウハウなど、多くの経営者からの“起業のヒント”が毎号充実。

定期購読お申し込みはこちら