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【ドーナツ・おにぎり】2025年のトレンドを先取り

公開日:2025.10.29

最終更新日:2025.10.29

※以下はビジネスチャンス2025年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

【2025年のトレンド】
・10坪から出店可能、2025年の主役はドーナツとおにぎり
・生ドーナツ旋風、新勢力がミスド牙城に挑む
・高級化と海外進出で広がるおにぎり市場

 新春号となる今回は、2025年のトレンドになるFC業態を予測し、今後の市場動向とともに紹介する。本誌編集部では業績好調な業種の中から、新規FCブランドが増加している業態を調査。その結果、テイクアウト型・ワンハンドフードである「ドーナツ」と「おにぎり」がヒットした。これら2つの業態は、セントラルキッチンで仕込みや調理ができるため店舗設備が少なく、10坪程度の小さいスペースにも出店できる。他の外食FCと比べて初期投資が抑えられるため参入しやすい業態であり、急激に伸びる可能性を秘めている。おにぎりは100店舗規模のチェーンが不在の未成熟市場、ドーナツは「ミスタードーナツ」のほぼ独占市場となっている。こうした状況下で、ドーナツとおにぎりの新興チェーンが市場に新風を巻き起こす。

Part1. ドーナツ

 新ジャンル「生ドーナツ」の登場により、一躍ブームとなっているドーナツ。専門店の増加だけに留まらず、コンビニやベーカリーなどの異業種参入も相次ぐトレンド商材となっている。

ミスド一強のドーナツ市場 1ブランドで83%のシェア

 ドーナツ市場は、長らく「ミスタードーナツ」が牽引してきた。米国発祥の同ブランドが日本に上陸したのは1971年。イースト生地を使ったアメリカ式ドーナツを浸透させ、国内ドーナツ市場で確固たる地位を築いてきた。運営会社のダスキン(大阪府吹田市)の調査によると、24年9月時点で1030店舗を展開する同ブランドの市場シェアは、約83%に上るという。
 加えて、業績も好調だ。同社の24年3月期決算では、同ブランドが大半を占めるフードグループ事業の売上高は584億3700万円。前年の488億7900万円より19.4%増、予想の567億円を上回る結果となった。また、ミスタードーナツ事業の顧客売上は26カ月連続で前年同月を上回っており、来店客数・客単価ともに向上している。これには24年7月に実施した定番商品19種の値上げも一部関係しているが、「ポケモン」や「ミニオン」など人気キャラクターとのコラボ商品や、「GODIVA」や「祇園辻利」といった有名ブランドとの協業をはじめとする商品戦略が、新規顧客開拓と単価アップに繋がっている。
 こうした取り組みを見ると、同ブランドの成長は近年のドーナツブームに関係なく、同社の戦略によるものだと考えられる。

ドーナツブームの年表

1971年 2003年 2006年 2013年 2022年
第1次 第2次 第3次 第4次 第5次
ミスタードーナツ日本上陸。バラエティ豊かなアメリカ式ドーナツが人気となる ミスタードーナツによる「ポン・デ・リング」が大ヒット クリスピー・クリーム・ドーナツが上陸。8~9時間待ちの行列で話題に 「クロワッサンドーナツ」が登場。世界的なヒット商品となる 生ドーナツの登場で一躍ブームに。専門店が続々誕生し、コンビニも参入

 

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生ドーナツのFCが登場 異業種参入も激化

 国内ドーナツ市場はミスタードーナツのほぼ独占状態だったが、2022年に興った「第5次ドーナツブーム」の継続により、近年は参入事業者が急増している。今回のブームの立役者は、日本発祥の新ジャンル「生ドーナツ」だ。もとは福岡のベーカリー「アマムダコタン」で販売される一商品だったが、あまりにも人気を博したため、同店は生ドーナツのみを販売する専門店を立ち上げた。それが、22年に中目黒でオープンした「I’m donut?」だ。同店は多数のメディアに取り上げられ、月商2億円を達成するほどの人気店となり、その話題性も相まって生ドーナツの認知度も向上した。
 生ドーナツの人気上昇に伴って、FCも登場している。全国に店舗を展開する「MILK DO dore iku?」や、たっぷりクリームがウリの「TRUFFLE DONUT」、焼きたてにこだわる「we♡donut」が、FCによる全国展開を進めている。しかし、生ドーナツは登場して間もない新ジャンルのため、定義や製法が定まっていない。現在は、主に左図の3パターンが「生ドーナツ」と称され、販売されている状況だ。
 一方で、海外ブランドの参入も相次いでいる。23年12月には、韓国発の「BONTEMPS」が、そして25年春にはLA 発の「Randy’s Donuts」が日本一号店をオープンする。
 さらに、ベーカリーやカフェ、コンビニなどもドーナツの提供を開始。イースト生地に精通しているベーカリーはドーナツとの相性がよく、今回のブームに乗じて取り入れたケースが多い。また極端な話、フライヤーさえあればドーナツの製造は可能だ。そのため、「丸亀製麵」は24年6月から原材料にうどんを使用した「うどーなつ」の販売を行っており、約4カ月で累計販売数860万食を突破するほどの好評を得ている。このように、異業種からドーナツに参入する企業も増えている。

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ミスドとの差別化が必須 高価格帯ブランドが増加

 新規参入が相次ぐドーナツ市場で注目すべきは、競争優位性だ。ドーナツ探求家の溝呂木一美氏によると、同市場において価値基準となるのは「ミスタードーナツ」だという。これは先述のとおり国内で同ブランドが浸透しているために、新ブランドはミスドとの比較評価になりやすいということだ。
 ミスドは大量仕入れ、大量生産によるスケールメリットがあるため、定番商品は200円前後のデイリープライスで提供できる。これに対し、新ブランドは素材や製造方法にこだわる高品質・高価格帯商品で差別化を図る傾向にある。実際、通常のドーナツよりも製造の手間がかかる生ドーナツは、1個400〜600円で販売されるケースが多い。それでも生ドーナツ特有のモチモチ食感や、生地にたっぷり詰まった生クリームの満足感から爆発的人気商品となっている。このようにミスドと比較した付加価値によって競争優位性が構築され、消費者に選ばれるブランドになると考えられる。
 一方で、懸念されるのは継続性だ。これまで、タピオカや高級食パンなど数々のブームが興ったが、その終焉はいつか訪れる。第5次ドーナツブームが去ったときに淘汰されないためには、商品以外の魅力も不可欠だ。たとえば、「JACK IN THE DONUTS」は、オールドファッションといった定番商品に加え、世界各地のご当地ドーナツなど、40種類のドーナツを150〜320円で提供している。幅広い商品展開と日常使いできる価格で支持され、日本発祥のチェーンながらミスド、クリスピー・クリーム・ドーナツに続く、業界3位の店舗数を誇っている。
 このように消費者の生活に根付くような戦略がブランド存続の鍵を握り、ひいては加盟店の成功に繫がると考えられる。

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Part2. おにぎり

 家庭料理やテイクアウトなど「中食」のイメージが強いおにぎり。しかし、おにぎり専門店がミシュラン掲載されたことで「外食」の可能性が拓かれた。インバウンド需要も見込める注目の商材だ。

コロナで中食が好調 外食人気も高まる

 米を主食とする日本人にとって、おにぎりは馴染み深い食べ物となっている。家庭で簡単に作れるほか、コンビニやスーパーなどでも定番商品として扱われており、朝食や昼食、軽食として日常的に親しまれている。
 おにぎりチェーンの歴史は長く、「おむすび権米衛」が1号店を出店したのは1999年、「ほんのり屋」は2002年となっている。テイクアウト業態をとる両チェーンは、駅近やSCなど人流の多い場所を中心に出店し、通勤通学中のサラリーマンや学生を取り込んできた。
 このようにおにぎりは長い間、家庭や職場などに持ち帰って食べる「中食」として親しまれてきた。しかし、2019年にイートイン型のおにぎり専門店「浅草宿六」がミシュランに選出されたことをきっかけに、おにぎりが「外食」として注目されるようになる。これにより、米や具材にこだわった本格おにぎりを提供する専門店が徐々に増え始めた。
 おにぎりの注目度が高まる中、更なる追い風となったのがコロナだ。コロナによる外出自粛で消費者が外食を控える一方で、テイクアウトやUberなどの中食需要が高まった。これに応じてコンビニ各社はおにぎり商品を拡充。いくらや漬けマグロなどを使った1個200〜300円の高価格帯おにぎりを発売し、人気を博した。

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高級おにぎり続々登場 コンビニとの差別化

 高価格帯おにぎりの登場は、消費者の購買意欲に変化をもたらした。本来、おにぎりは高い金額をかけるものではなかったが、商品クオリティの向上によって消費者がおにぎりにこだわりを持つようになった。また、コンビニおにぎりの平均価格が上がったことでおにぎり専門店との価格差が狭まり、消費者がおにぎり専門店の利用を検討するようになった。
 そのため近年は、家庭やコンビニ商品と差別化を図る、一風変わったおにぎりを提供する専門店が増えている。たとえば、2022年にオープンした「TARO TOKYO ONIGIRI」は、白米・黒米・玄米の3種類から具材に合った米を使用している。「銀だらゆず味噌西京焼き」(360円)や「いぶりがっこ味噌チーズ」(260円)といったユニークなラインナップに加え、小鉢料理のような見た目の可愛らしさで話題となった。
 2023年にオープンした「Onigiri Burger」は、ステーキやすき焼き、牡蛎フライなど豪勢な具材を挟んだインパクト抜群のおにぎりを提供している。同店は、日常食というおにぎりの既成概念を覆す、超高価格帯の高級おにぎりを開発。「侍〝SAMURAI〞神戸牛ステーキ」(5500円)や、「神戸牛関西風すき焼き〝SUKIYAKI〞」(3000円)など、日本産の具材や日本特有の料理にちなんだ商品戦略でインバウンド需要を獲得している。関西国際空港への出店で海外客を取り込み、高単価も相まって最高月商は5000万円を記録した。
 一方、伝統的なおにぎりを職人技で握ることで、長年人気を博している専門店がある。1960年に大塚で創業した「おにぎりぼんご」だ。〝握らないおにぎり〞で有名な同店は、職人による絶妙な力加減で、ほかにはないふわふわ食感を演出している。多数のメディアに取り上げられ、連日大行列の同店だが本店のみで多店舗展開をしていない。
 しかし2022年、同店の数少ない弟子による新ブランド「おにぎりこんが」が誕生。ぼんごの味を国内外に広めるため、2024年4月にFC募集を開始した。運営会社のFBIホールディングスは、職人技が強いぼんごのオペレーションを標準化。セントラルキッチンで具材を調理することでぼんごの味を再現し、2カ月間の研修で握り方を指導する。
 ぼんごの味とメニューを踏襲する同店だが、海外客にアプローチするため独自メニューの開発を行っている。たとえば、「ボロネーゼ」(460円)や「カルボナーラ」(460円)など、外国人がイメージしやすい味を中心にラインナップを拡充させている。
 このように、話題となっているおにぎり専門店はエッジの効いた特徴を持っている。日本人にとって既知の存在となったおにぎりに対し、未知の可能性を探しているのが現在のおにぎり市場だ。長い歴史を持ちながらも100店舗規模のチェーンが不在の未開拓市場で、どのFCが台頭するのか注目だ。

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海外で人気沸騰中のONIGIRI

 近年、海外でおにぎりビジネスを展開する日系企業が増えている。「おむすび権兵衛」は2013年にアメリカ、2017年にフランスに進出しており、現在は海外4店舗を展開している。また、香港では日本人が立ち上げたおにぎり専門店「華御結」が一世を風靡している。
 運営会社の百農社国際は日本の農業に貢献するため、2011年に日本米を使ったおにぎり専門店「華御結」を香港で創業した。テイクアウト業態をとる同店は小さなスペースでも開業可能で、駅構内やSC、住宅街など幅広い立地に出店している。23年12月時点の店舗数は140店以上と、日本のおにぎりチェーンを上回る規模感だ。
 海外では日本ほどコンビニが浸透しておらず、おにぎりなどの軽食を気軽に購入できる環境が整っていない。そのため、おにぎりビジネスの可能性は大きく、先行者利益も得やすい状況となっている。加えて、アメリカをはじめとする海外では健康意識が高まっており、和食人気が高まっている。その中で、ワンハンドフードで手頃なおにぎりは、ハンバーガーに代わる選択肢として注目されている。
 また、海外でおにぎり専門店を開業する際は、その国で人気の具材を取り入れることで、比較的簡単にローカライズができる。宗教的配慮もしやすい。こうしたことから、今後はおにぎり専門店の海外進出が過熱する見込みだ。

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香港で140店舗以上を展開する「華御膳」

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