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【ありがとうサービス】直営・FCを問わず優秀な人材を確保し教育後に評価

公開日:2023.08.30

最終更新日:2023.08.31

※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

ありがとうサービス (愛媛県今治市) 井本 雅之社長(67)

1956年生まれ。愛媛県今治市出身。1980年早稲田大学教育学部卒業後、日本マーケティングセンター(現(株)船井総合研究所)入社。1985年に退社後、井本ブラザ ー商会代表取締役就任。1989年今治デパ ート入社、1994年代表取締役などを経て、 2000年ありがとうサービス代表取締役就任。
加盟ブランド
ブックオフ/ハードオフ/モスバーガー/トマト&オニオン

 

 

 

 

 株式公開をしているフランチャイジーとして稀有な存在でもあり、直営事業や海外展開、地域創生事業などを幅広く展開するありがとうサービス。135店舗を有する巨大フランチャイジーは、地元愛媛県の雇用創出といった視座の高さで人材育成を行っている

社会の動向に合わせて社員の定義を再構築

 

―現在、御社は直営とFCを運営していますが、フランチャイジーとして心がけていることはどんなことでしょう。
井本 1つめは迷惑をかけることなく、スタンダードは最低限守ること。2つめは本部の期待値を上回るパフォーマンスを出すこと。この2つがフランチャイジーの役割です。
―直営で行うか、フランチャイジーとして加盟するか、その選別基準はありますか。
井本 直営とFCで区別をするようなことはしていません。直営を行うきっかけとなったのは、昔、自身の子どもから言われたある一言がきっかけでした。子どもが幼稚園に通っていた時に、近所のファミリーレストランによく行っていました。しかし小学校3〜4年になった頃、急にファミリーレストランに行くのが恥ずかしいと言い出したのです。
 そこで考えたのが、「子どもを連れて行けて、親も美味しく食べられ、1杯飲めるリーズナブルなお店はないものか」というものでした。
 そして考えた結果、焼き鳥がいいのではないかと思いました。しかし調べてみると、そのような焼き鳥ブランドはありませんでした。それなら自分たちで考えるしかないと思って作ったのが、直営業態です。このように、既存FCにない業態で自分がやりたいものが出てきたら、直営を作ることはあります。
―現在御社では、FC店以外にもこうした直営や海外店舗、また地域創生事業と幅広く事業を展開していますが、構成する社員やパート・アルバイトスタッフの比率はどのようになっていますか。
井本 正社員は202名、パートナー(パート・アルバイト)は1398名です。基本的に正社員は店長になりますが、これまで正社員の定義は曖昧でした。たとえば、結婚して産休に入った後、子育てで働く時間が制限されます。でも当社で働き続けたいという人もいます。以前ならこうしたケースはパートで働いてもらいましたが、今は正社員という形を希望する人が増えました。
 その理由は、上場企業の正社員であれば、住宅ローンを借りる時に与信があるからです。やっている仕事は変わらず、労働時間だけが違います。このような人たちは現在、時給の正社員となっています。転勤なしでエリア限定ですが、手当などは正社員と同等に処遇しています。当社は社内結婚が多いのですが、奥さんが仕事したいなら正社員のまま。優秀な人には長く働いてもらいたいですね。
―正社員にすると固定費は上がります。
井本 一番高い経費は人件費。でも、一番安い経費も人件費です。やる気のない人の給料が一番高くつきますが、積極的に動く人は成果から比較すると一番安いのです。人件費を一番高い経費と捉えていたら人は育ちませんし、会社も成長しないでしょう。
―御社はハードオフやブックオフといったリユース事業、またモスバーガーのフード事業、そして地元の交流館や温泉館の管理といった地方創生事業の3つの事業を運営していますが、それぞれで採用の仕方は異なりますか。
井本 ありがとうサービスという会社として、またFCブランドごとの店舗での採用、両方で求人していますが、最近はブランドとして求人した方が集まりやすい傾向にあります。当社は直営でおしゃれなチョコレート専門店「Atelier tsumugi」を運営していますが、このブランドは当社が運営していることがあまり知られていません。実際、昨年は17名を新規社員として採用したのですが、Atelier tsumugiだけで5名も採用できました。嬉しいことなのか、悲しいことなのか、複雑な思いです(笑)。
 当社の理念に共感する人はもちろんウェルカムです。しかし、ブランドが好きという人が多いのも事実です。ブックオフやハードオフなどを手掛けるリユース事業では、「ありがとうサービス」として採用したがっていますが、現実はブランドで選ばれています。採用面から見ると、みんなが好きなブランドを作ることがキーポイントとなると思います。
―FCでの採用だと他の加盟店との差別化も考えなければなりません。
井本 当社にも関東出身の社員がいました。その社員はハードオフに勤務していたのですが、事情があって関東に戻ることになりました。ハードオフは関東にもあり、その店舗も当社と同じ加盟店です。そこで、関東の店舗に連絡して当社の社員を紹介しました。同じブランドなので働きやすいですし、本人もそれを希望していました。当社の良い部分があったら、新しい会社に提案できるので、加盟店も従業員もプラスになります。このように加盟店同士で人材を取り合うというより、全国の加盟店で働けることの方が大切です。働く人のメリットになるのであれば、近隣の加盟店に紹介しても構わないと思っています。

会社とFCブランド店の両方で求人

創業当初から受け継がれる育成ノートをアレンジ

―御社の評価と教育について教えてください。
井本 ハードオフやブックオフについては、キャリアパスプランがあります。ブックオフ創業者の坂本孝さんが大手FCの手法を参考にして作成したと聞いています。また一方で、当社のルーツはブラザーミシンの販売代理店であり、当時でいえばFCみたいなものです。創業期からセールスマンを育成するためのノウハウがありました。いわば育成ノートみたいなもので、入社1日目は何をする、2日目はこんな話をするといった具体的なことがまとまっています。それが60年以上前からあったのです。このノートを基に時代に合わせ、30日間で何を教えるかをまとめました。教育は、本部からのマニュアルや自社オリジナルの手帳を利用しています。
 評価と教育は一体と考えています。ほったらかしにして半年に1回評価しても、評価された方は納得しません。当社では、口うるさくても教育はします。言ってないことを従業員はできません。その場合、言わなかった経営側が悪いということになります。きちんと教育した後に評価することを心がけています。
―教育して評価することが大切なのですね。それでもこれだけの規模になると優秀な人材を確保するのが大変だと思います。
井本 コロナもあってなかなか人が採用できず、事業運営にも影響が出ています。先代である父からは「人は常に足りない。足りているのは、現状に満足しているからだ」と言われました。足りないと言っているほうが適度な厳しさがあり、会社が適度に成長している証拠だと言います。この言葉を聞いた当時、私は20代で、言っていることにピンときませんでした。ただ今はその意味が非常によく分かります。先代は「俺が死んでから分かる」とも言っていましたが、本当にその通りですね(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

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