• HOME
  • トップインタビュー
  • 【ダイキチシステム 】リブランディング店「白い大吉」で若者や女性層の取り込みに成功

【ダイキチシステム 】リブランディング店「白い大吉」で若者や女性層の取り込みに成功

公開日:2025.11.19

最終更新日:2025.11.18

※以下はビジネスチャンス2025年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

希望地域での開店支援「地元でリース方式」を7月からスタート

「やきとり大吉」を全国に475店舗展開する、ダイキチシステム。直営店や法人FCはなく、運営店舗全てが個人経営のFC店という独自のビジネスモデルを築いている。同社では近年、組織体制の変更や若者や女性などの新規層をターゲットとしたリブランディング店「白い大吉」の出店、また希望の地方での出店を支援する「地元でリース方式」など、新たな試みを進めてきた。2027年に創業50周年を迎える同社の今に迫った。

#フランチャイズ
#ダイキチシステム 
#やきとり大吉
#白い大吉

周辺住民の憩いの場としても親しまれてきた「赤い大吉」

#フランチャイズ
#ダイキチシステム 
#やきとり大吉
#白い大吉

23年就任の新社長のもと、改革続ける ブランド活性化目指し、リブランディング決意

 23年、サントリー出身の近藤隆氏が同社の代表取締役社長に就任した。同氏はサントリー時代に外食チェーンを担当する部署で「やきとり大吉」を6年間担当した後、08年から4年間、ダイキチシステムに出向。その後プロントコーポレーションの取締役を経て、19年にダイキチシステムの取締役として戻ってきた人物だ。同氏就任からの数年を振り返る。

住宅地出店の地域密着型居酒屋 コロナ禍を救った出店戦略

「やきとり大吉」は、全国チェーンによるブランド運営ノウハウと、個人FCの店主による地元密着の店舗運営の掛け合わせが特徴だ。同業が多く集まる繁華街ではなく、駅から距離のある住宅地に10坪20席を標準として出店。ゆえにユーザーは通りすがりの客ではなく、近隣住民のリピーターが多い。店の雰囲気は個人店に近く、にこやかに客とやりとりを交わす店主もいれば、黙々と焼きながら客が居心地よく過ごせるように気遣いを欠かさない店主もいるなど、それぞれの個性を反映した店舗で地域に受け入れられてきた。
 住宅地への出店は、賃料削減やファミリー層の獲得、同業がいない場所でのユーザー取り込みと言った目的があるが、コロナ禍ではその立地が同社を救った。同社ではコロナ禍による閉店は1店もなく、売上の減少幅も同業と比較すると少なく済んだという。
「住宅地出店による地域密着の強みが、しんどい中でも出せたかなというのが素直な実感です。当時駅前や繁華街からは人がいなくなりましたが、『やきとり大吉』はお客様の自宅から数分の距離に店舗がありますので、心配して声を掛けに来てくださるお客様が多かったと聞いています。そういった地元の方々との繋がりとテイクアウトの販促強化で、苦しい時期を乗り切ることができました」(近藤隆社長)

#フランチャイズ
#ダイキチシステム 
#やきとり大吉
#白い大吉

店主の魅力で「2度来たら常連客」を実現

就任後に組織体制を大きく変更 ブランディングのため大規模アンケート実施

「就任以降、常に社員に発信していることがあります。それが何事においても、『前例主義や今までの発想を捨て、色々なことを変えていこう』ということです」(同氏)
 近藤氏の就任以降、社内の組織体制を大幅に変更した。従来は社員全員が営業、物件調査、店舗改装関連業務など、マルチタスクで行っており、それが会社としての強みでもあった。しかし今後のさらなる展開に向けては、より専門的な深堀りが必要と判断。物件開発や開業者開発を行う開発部、既存店の活性化やメニュー開発などを行う営業部門など、社員を専門部署に分けて配置したという。
 同時に、20年からは「やきとり大吉」のブランド活性化に向けて、1万人への大規模なWEBアンケートを実施した。そこで見えてきたのがブランドの認知度の高さと、それに相反する利用率の低さであった。
 「店舗が北海道から沖縄までありますので、ブランド認知度は、関西では71%、関東38%、全国では49%と、非常に高い数値を出すことができました。しかし利用率のスコアは関西30%、関東13%、全国%19とものすごく低いことがわかりました。その要因を21年に徹底的に掘り下げて調査した結果判明したのが、入店時のハードルの高さでした」(同氏)
「やきとり大吉」のトレードマークは、赤提灯に赤い看板、鉄道の枕木や電柱を再利用した郷愁を誘う店舗デザインだ。昔ながらの伝統的なデザインが好まれる一方で、若者や女性層からは「小さい窓と暖簾によって外から店内の様子が見えず、入るのに躊躇する」という声も多くあがっていた。店内の居心地の良さや専門店の味は、「2度来店したら常連になってくださる方がほとんど」と店主が豪語するほど自信を持つが、まずは来店してもらえなければ何も始まらない。そこで同社ではリブランディング店として、初めての人でも入りやすい店の開発に取り掛かった。

#フランチャイズ
#ダイキチシステム 
#やきとり大吉
#白い大吉

店内が見える造りにし、入店しやすい雰囲気に

ブランド活性化による、第二の創業
外観・メニューなど刷新し、ユーザー層を拡大

 1万人へのWEBアンケートによりわかった、入店時のハードルの高さ。そこで同社がリブランディング店として22年に出店開始したのが、「白い大吉」である。従来の赤い看板が目印の外観を一新し、白と木目を基調としたモダンな店舗デザインに変更。また外から店内が見渡せるつくりにし、メニューや店内導線も改めた。従来の女性ユーザーは2~3割だったが、「白い大吉」では5割を超え、若者や女性、ファミリー層の拡大に繋がっている。

一品料理やデザート、季節メニュー追加 女性や若者のファン広げ客単価もアップ

 リブランディング店は、内装及び外観において白と木目を基調とした洗練されたデザインを採用。また、外から店内が見渡すことができる設計となった。従来店もリブランディング店も、看板は「やきとり大吉」として出店しているが、呼称する際には従来店を「赤い大吉」、リブランディング店を「白い大吉」と区別している。
「白い大吉」のメニューは、焼き鳥専門店の良さを生かし「赤い大吉」のメニューを完備しつつも、サラダやささみカツ、レバーパテや鶏白湯ラーメン、デザートなどを取り入れ、若者や女性などの顧客層拡大に繋げた。従来、メニュー変更は年1回ペースだったが、「白い大吉」では3カ月に1度のペースで季節限定メニューを刷新する。四季の野菜やクリームなどを取り入れた季節限定メニューは好評で、「赤い大吉」でも年2回シーズンメニューを2カ月ずつ取り入れるようになるなど、相乗効果を生んでいる。
 また店内の導線も改善し、従来1カ所だった焼き場からの出口を2カ所に増設。より効率的な店舗オペレーションができるように改善した。
「赤い大吉」では男性ユーザーが圧倒的に多く、女性は2~3割だったが、「白い大吉」ではどの店舗も女性が5割を超えるようになった。若者をはじめ、ファミリー層も増えたという。立地戦略や坪数は変更していないにも関わらず、客単価は「赤い大吉」の3000円に対し、「白い大吉」は3300円となった。「『赤い大吉』は当社を48年間支えてきたブランドですので、絶対に疎かにはしませんし、今後も大事にしていきます。一方で『白い大吉』は新しい若いお客様の獲得を進める店として、両輪で展開します。『白い大吉』はありがたいことに非常に好評です。『やきとりの大吉』と知らずに入店されるお客様も多く、赤と白は兄弟なのだと説明させていただいています。今後リブランディング店を増やし、ゆくゆくは赤から白へ、白から赤へと相互に送客をしていけたらとも考えています」(同氏)

#フランチャイズ
#ダイキチシステム 
#やきとり大吉
#白い大吉

女性客やファミリー層にも対応したメニュー構成

「白い大吉」は全国6都道府県に拡大 データ解析進め、今後の出店方針定める

 現在、「白い大吉」は、東京、千葉、神奈川、大阪、兵庫、広島と、6都道府県12店舗まで拡大している。同社では当面の目標として、『白い大吉』の全国主要都市への出店完了を急ぐ考えだ。好調とはいえ、今後リブランディング店だけを出店するという方針を固めたわけではない。同社では近年、出店した店舗のデータ分析を進めており、これから2~3年で主要都市への出店を完了した後、解析したデータをもとに中長期的な出店戦略を策定する方針だ。
 また同社では「赤い大吉」に「白い大吉」の外観を取り入れたハイブリッドモデルの店舗を東京・埼玉に開店。同モデル店舗では赤い大吉の看板を残しつつも、課題であった「入りづらさ」を解消し、外から店内がよく見えるつくりにした。モデル店舗の動向によって、既存の「赤い大吉」のリニューアルの推進や出店の方向性を更に検討していくという。

2030年に「やきとり大吉」700店舗が目標
「地元でリース方式」で新規出店希望者獲得へ

 同社は、年に「白い大吉」「赤い大吉」を合わせた「やきとり大吉」での全国700店舗への拡大を目指している。そんな中、個人によるFC展開というビジネスモデルゆえ、近年の課題となっているのが店主の高齢化による店舗数の減少である。事業承継への仕組みづくりに加え、同社では新規FC経営者の獲得強化に向け、25年7月に「地元でリース方式」をリリースした。

店主の高齢化により店舗数減少 事業継承への仕組み作り着手

 同社は、 1977年から「お金はないが自分で商売をしたい」という若者に向けた独自の開業プログラムにより、個人FC店の開業を支援してきた。ピーク時の90年代後半には年間100店舗以上を継続して出店。バブル崩壊後はリストラをされた40~50代が多く開業し、01年には1126店舗まで拡大した。地域密着でリピーターが多い「長く愛される店舗経営」により、個人FCであっても10年以上経営している店主が8割以上を占めている。しかし02年以降は、連続で店舗数が純減。近年は、90年代前後に出店した店主たちが軒並み60~70代となって引退の時期を迎えており、店舗数の減少が同社の大きな課題となっている。
「店舗数減少の要因は、店主の高齢化や病気、後継者不足によるものです。個人FCの事業継承は法人のようにすんなりとはいきません。『継ぎたい』という家族や親族がいればスムーズですが、第三者へ継承する場合は難しい。事業継承への仕組みづくりは、社長になってから取り組んでいる課題の1つです。長期的な目線を持ち、店主の方々に寄り添って進めていく必要があります」(同氏)
 同社では、後継者不足に悩む店舗のうち何割かで事業継承を実現させ、その店舗に新たな出店希望者を割り当てることができるよう、仕組みをつくっているという。

「地元でリース方式」で希望地に出店 7月のリリース後に問い合わせ殺到

 25年7月に同社が新たにリリースした「地元でリース方式」は、これまでの「リース方式」「オーナー方式」に次ぐ第3の方式だ。「リース方式」は加盟金99万円(別途、保証金50万円)で本部の店舗を借り受けることができ、店主は資金を抑えながら開業ができる。一方、「オーナー方式」は、初期費用1800万円で希望エリアに出店できる。現在の店主の9割がオーナー方式を採用しているが、ほとんどの店主が最初はリース方式で始め、数年後にリースしていた店舗を買い取るか、もしくは希望の場所に新規出店してオーナーになっている。
「リース方式」でこれまで課題となってきたのは、本部が指定した出店予定地が店主候補の希望と折り合わないこと。子どもの教育や親の介護などを理由に出店自体を辞退するケースが幾度も発生していた。そこで「地元でリース方式」では、「現在住んでいる地域で開業したい」「実家の近くに戻って開業したい」というニーズに応え、店主候補の希望のエリアに本部が店舗を用意する。「リース方式」と同じく加盟金は99万円だが、「地元でリース方式」は保証金を350万円で設定。更新期間は「リース方式」が2年であるのに対し、「地元でリース方式」は5年としている。
「『地元でリース方式』を発表してから、若い方を含め非常に多くの希望者から問合せをいただいています。今期開始からまだ3カ月弱ですが、年間出店計画数の3分の1にあたる数の店主候補を既に確保できました。そのうちの約70%が『地元でリース方式』を希望しています」(同氏)
 出店希望者の募集は、これまで店内販促物やホームページを主体としてきたが、近年は23年に親会社となったエターナルホスピタリティグループ(『鳥貴族』を運営)の協力もあり、Instagramの広告など、SNSを活用。また地方移住支援による地方創生を目指した社団法人とのコラボレーションも開始。30年700店舗に向け、今後も挑戦を続けていく。

会社概要
ダイキチシステム
代表者 代表取締役社長 近藤 隆
所在地 大阪府大阪市中央区
設 立 1977年12月
資本金 2,080万円
売上高 5億2000万円(25年7月期)
店舗数 475店舗

#フランチャイズ
#ダイキチシステム 
#やきとり大吉
#白い大吉ダイキチシステム
(大阪市中央区)
近藤 隆社長(58)
Profile こんどう・たかし
1967年、大阪府生まれ。90年にサントリーに入社。94年より外食チェーンを担当する市場開発本部にて、ダイキチシステムの営業担当となる。2008年、役員としてダイキチシステムへ出向。12年にサントリーへ戻り、経営管理部に配属。その後、プロントコーポレーションに取締役として出向。19年にダイキチシステム取締役、23年に代表取締役社長に就任(現任)。

 

関連記事

【chocoZAP】3年弱で1800店舗・会員数120万人超えのモンスターブランド(前編)
【chocoZAP】3年弱で1800店舗・会員数120万人超えのモンスターブランド(後編)
【大興産業】事業多角化と現場主義で変化に強い組織づくり

 

 

次なる成長を目指す
すべての経営者を応援する
フランチャイズ業界の専門情報誌

フランチャイズ業界唯一の専門情報誌として、毎号さまざまな切り口をもとに新興本部から大手本部までをフォーカス。またFCを自社の新たな経営戦略として位置付け、中長期的な経営を目指す経営層に向け、メガフランチャイジーの情報も提供しています。

記事アクセスランキング
次なる成長を担うすべての起業家を応援する
起業&新規事業の専門情報誌

“起業のヒント” が毎号充実! “ビジネスチャンス” の宝庫です。
すぐにでも役立つ独業・開業・転業・副業サポートの雑誌です。
資金をかけずに始められる新しいビジネスの紹介、FC、経営・会社運営のノウハウなど、多くの経営者からの“起業のヒント”が毎号充実。

定期購読お申し込みはこちら