【chocoZAP】3年弱で1800店舗・会員数120万人超えのモンスターブランド(後編)
公開日:2025.11.19
最終更新日:2025.11.18
※以下はビジネスチャンス2025年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
無人モデルを武器に地方出店を加速
無人運営のチョコザップは店舗拡大に伴い、店舗の汚れやマシンの故障、不具合などの品質問題が浮上した。これを解消するため、同社は2025年に「フレンドリー会員」と「セルフメンテナンス会員」の展開を本格化した。これらは店舗運営に協力する利用者のことで、前者は清掃や備品補充、後者はマシンの簡単な不具合や修繕対応を担う。利用者はその対価として、月会費割引やギフトカードなどの特典が受けられる仕組みだ。同社は無人運営と遊休不動産の活用によって損益分岐点を下げ、今後は人口の少ないエリアへの出店も加速する。

稼働率の高い設備を配置
物件ごとに最適な設備を提案地方にも出店可能な無人モデル
─遊休資産の活用を視野に入れているとのことですが、物件のスペックはどの程度を想定していますか。
瀬戸 持ち物件のスペックはさまざまなので、厳密には指定しません。FC店舗の新規出店の必要条件としては24時間営業が可能で、ある程度の視認性、間口5m以上、正面に袖看板を設置するくらいです。郊外店舗は5台以上停められる駐車場を付けます。
─チョコザップのサービスラインナップは、トレーニングマシンやセルフエステ、洗濯・乾燥機やカラオケとさまざまで、店舗によって設備は異なります。幅広い物件で開業可能とのことですが、どのように導入設備を決めているのでしょうか。
瀬戸 我々はAIカメラを通して、どのマシンがどれくらい利用されたかデータを取ってきました。基本は稼働率が高いものから順番に埋めていきますが、坪数に応じて最適な設備を提案していきます。
─稼働率が高い設備とは。
瀬戸 トレーニングの中だったら、トレッドミルは人気ですね。従来のジムは筋トレマシンを中心に揃えるケースが多く、当店も始めはそうでした。しかし、稼働率を見るとトレッドミルなどの有酸素系の方が高かったため、次第に切り替えていきました。トレーニング以外だと、マッサージやエステ、カラオケも人気です。
─出店立地は繁華街や住宅地、過疎地に関わらず、網羅していく考えですか。
瀬戸 始めから一気に拡大すると決めていたので、早い段階で人口の少ないエリアを含めてあらゆる前提で出店し、すでにテストを終えています。当店は無人ですが、掃除は「フレンドリー会員」、マシン関係は「セルフメンテナンス会員」といったように、お客様に運営を支えてもらっています。人がいなくても運営が成り立つシステムを確立しているため、採用や教育の必要もなく、人口の少ないエリアでも十分成り立ちます。TV番組「ナニコレ珍百景」にも出た、超田舎の畑のど真ん中にある店舗でも十分ペイしています。当店は2025年8月14日時点で1823店舗になりましたが、ビルの立ち退きを除き、撤退実績は1店舗もありません。
─持ち物件の活用と無人運営の確立により損益分岐点を下げ、立地条件に囚われることなく出店できるようになりました。
瀬戸 また、1800店舗を出店する中では当然、上手くいく・いかないもあり、その分データも貯まっています。たとえば、コロナ禍の2店舗目、3店舗目で出した神田店。オフィス街立地のためコロナ禍は人流が途絶え、始めは全く上手くいきませんでした。一方で、住宅地に出した店舗はすごく好調でした。こうして条件を変えて出店してきたことで、立ち止まらずに進めましたし、立地や状況に応じたデータ特性など色々なものが見えるようになりました。
逆に、ダメなところもあります。過去には、地下・1階・2階・3階・4階に出店してきましたが、3階以上だと芳しくないデータも残っています。このように、本当にダメなところと良いところのデータが揃っており、良いところで勝てる確率はかなり高いです。

美容設備も多数展開

フレンドリー会員による店内清掃

会員サービスを拡充 シェアリングで総合力を発揮
─FCプランを教えてください。
瀬戸 開業パターンは、オーナー様が出店先を選定する「新規店舗」と、直営店舗を引き継ぐ「既存店舗」の2種類です。
「新規店舗」で開業する場合は加盟金200万円、オーナー向け研修を含む開業準備費200万円、工事設備費1800~3500万円、合計2200万円からとなります。「既存店舗」の場合は加盟金200万円、譲渡店引継準備金200万円に加え、物件により変動する機器設備購入費、営業権、物件取得費を含めて、合計2700万円からという想定です。現在、先着店舗限定で加盟金200万円を値引きしているため、新規店舗の場合は2000万円から、既存店舗の場合は2500万円から開業可能となっています。なお、現段階ではトライアル募集としており、今後変更が生じる可能性もあります。
─それぞれの収益モデルは。
瀬戸 直営店実績を踏まえた試算で新規店舗の場合、初年度売上は稼働会員数814人で約1907万円、償却前営業利益は約533万円です。経費の内訳は地代家賃約22.6%、水道光熱費約4.1%、ロイヤリティ15%、広告宣伝費10万円、システム費10万円、運営管理費11万円、支払手数料3%、そのほか備品消耗品費、本部に店舗修繕や備品補充・清掃・マシン修理などの維持管理がオプションで発生する場合は、別途費用がかかります。シミュレーションでは投資回収期間は4年2カ月の想定です。
一方、既存店舗の場合、初年度売上は会員数988人で約2726万円、償却前営業利益は約1152万円。投資回収期間は3年9カ月を想定しています。
─サブスクモデルの場合、売上計上はどのようにされるのでしょうか。
瀬戸 該当月の最多来館店舗に月会費全額が売上計上されます。そのため、売上を上げるにはマシンメンテナンスや清掃、サポートに力を入れ、お客様に一番良いと思ってもらうことが大切です。
─そこで競争力を高めていくわけですね。
瀬戸 そうして切磋琢磨しながらも、稼働率や生産性、効率を上げるためにもシェアリングを進めていきます。チョコ ザップの強みは総合力ですから。また、会員制サービスなので、マルチで色々なものをやってもいいわけです。たとえば、会員向けサービスの1つに最大年1回のMini人間ドックがあります(※)。これは、新宿の医療機関でMRIかCT、エコーのうち1つの検査を追加料金なしで受けられるサービスです。MRIのような年に1回でも良いサービスに関しては、本部で負担して全店でシェアリングしてもらい、身近にあった方が良いサービスは各店舗に置いてもらう。こうしたシェアリングエコノミー的な考えもあります。
─無人運営のため、オーナーの業務はほとんど発生しないと考えてよいのでしょうか。
瀬戸 ある程度限定されています。チョコザップの運営は人ではなく、設備やシステムなど再現性のあるものに頼っています。人が関わると上にも下にもブレが生じるため、当店は如何に無人で回すかにこだわってきました。ビジネス形態としては、マンション投資やランドリーに少し似ていると思います。
─確かに、人を置けば済む問題も多々あります。
瀬戸 マシンが壊れた時に人がいればその場で直すこともできますが、そうすると普通のジムと何ら変わりません。収益構造が変わらなければ、地方になんて出店できません。そのため我々は、無人で回していく前提で経営を改善してきました。サポート会員の仕組みやAIカメラによるモニタリングがその例です。この無人運営が、チョコザップの競争力になります。
(※)検査は医療機関で行われ、chocoZAPでは一切の医療行為を行わない
同社は今後、チョコザップ事業で蓄積してきたデータやアセットを活用した新規事業展開を加速する。医療・ヘルスケア領域では、医療機関や公的機関などと提携し、会員123万人(2025年8月14日時点)のライフログデータによるソリューション共同開発に取り組む。また、店舗アセットは広告掲載のほか、サンプリング提供に活用できる。ジムのバリアフリー化、ユニバーサルサービス化を成し遂げた同社が次に挑むのは、健康のインフラ化だ。


日本一の会員数を活かした新規事業展開へ
アプリで運動や食事記録を管理 データ活用の可能性
─これだけの利用者数がいれば、データビジネスの可能性も見えてきます。
瀬戸 やはりIDがあるのは大きいですね。データビジネスで考えると、サンプリングに活用できると思います。サンプリングは、アルバイトを雇って店前や駅前で配布するのが一般的ですが、実際は1時間あたり数件しか配れないそうです。また、不特定多数に配るので誰に配ったのかも分かりません。その点、当店の場合はIDが分かりますし、条件に合う特定の人にお渡しすることも可能です。人件費も掛かりません。また、IDがあるためその人の運動習慣や、MRIを利用していれば健康状態も分かります。サンプリング結果の原因が分かることに加え、IDを通してその後の行動変容も追えます。
─逆に、IDを利用者に還元することも考えられますか。
瀬戸 結果に近づくための手段を最適化していくことですね。結果を出すためには、どんな手段を取るべきか逆算する必要があります。その点、当店ではボディメイクに成功した人がどのようなアクションをしていたのか、運動記録と食事記録から分かります。これらはアプリで管理可能となっており、食事記録に関しては食事の写真をアップロードするだけで記録とカロリー計算が自動でされます。こうした1つひとつのファクターを最適化し、効率よく痩せる方法を提供できれば、利用者のモチベーションに貢献できると思います。
─グループの他事業とチョコザップ事業でシナジーを生み出す戦略はありますか。
瀬戸 すでにシナジー効果はあり、RIZAPの新規入会者のうち約2割がチョコザップからのお客様となっています。チョコザップでは無人を追究してきましたが、やはり人によって説得力が増す部分はあると思います。たとえば、カーブスさんはプロテイン販売でも成果を出されていますが、運動初心者の方が買うのはカーブスさんのトレーナーが売っているという安心感があるからです。そのため、説得力や動機付けなどの部分で、人との連携で発揮される価値もあると思います。
─中長期的に見て、チョコザップは RIZAPグループの中でどのような位置づけを目指しているのでしょうか。
瀬戸 チョコザップのマーケット規模は、非常に大きいと感じています。RIZAPは高単価ですし、本気の方限定という形で集客しているため対象が絞られます。大多数の方はストイックにならず、目標を決めずに運動したいのだと思います。その点、チョコザップは体型維持や自分磨きくらいの緩い感覚で利用でき、かつ低価格です。可能性や需要はまだまだあると実感しています。

日本一の会員数を活かした新規事業展開へ

フィットネス未経験者からも支持を受ける
会社概要
RIZAPグループ
代 表者 代表取締役社長 瀬戸 健
所在地 東京都新宿区
設 立 2003年4月10日
塩本金 1億円
事業内容 当社グループの中期経営戦略の立案・遂行╱グル ープ会社の事業戦略実行支援・事業活動の管理
従業員 連結4625人(2025年3月31日現在)
決算期 3月期
chocoZAP
RIZAPグループ
(東京都新宿区)
瀬戸 健社長(47)
1978年福岡県生まれ。2003年に健康コーポレーション(現・RIZAPグループ)を設立。2006年に札幌証券取引所「アンビシャス」へ上場。2012年よりパーソナルトレーニングジム「RIZAP」を展開。 2022年9月コンビニジム「chocoZAP」をグランドオープン。
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