
【Smile5/SENSACION】「鳥貴族」の加盟店スタッフから外部独立
公開日:2025.07.20
最終更新日:2025.07.20
※以下はビジネスチャンス2025年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
グループ全体でFC28店舗を運営
大阪を本拠地とするSmile5は、グループ会社のSENSACIONとともに山口や広島、島根、大阪、愛知、茨城エリアで飲食事業を手掛けている。今年3月末時点で、「鳥貴族(15店舗)」、「乃が美はなれ(7店舗)」、「ゴンチャ(4店舗)」、「焼肉ライク(1店舗)」、「福包酒場(1店舗)」のFC5ブランドに加盟しており、オリジナルの飲食業態4ブランドを合わせて、グループ全体で34店舗を擁する。前期の売上高は両社合計で23億3891万円。将来の100億円企業を目指しており、ホールディングス化のための経営者輩出にも注力している。
複数ブランド運営でリスクヘッジ
大阪を本拠地とするSmile5は、グループ会社のSENSACIONとともに山口や広島、島根、大阪、愛知、茨城エリアで飲食事業を手掛けている。今年3月末時点で、「鳥貴族(15店舗)」、「乃が美はなれ(7店舗)」、「ゴンチャ(4店舗)」、「焼肉ライク(1店舗)」、「福包酒場(1店舗)」のFC5ブランドに加盟しており、オリジナルの飲食業態4ブランドを合わせて、グループ全体で34店舗を擁する。前期の売上高は両社合計で23億3891万円。将来の100億円企業を目指しており、ホールディングス化のための経営者輩出にも注力している。
初期は鳥貴族で拡大 約10年後に別ブランド加盟
──御社はSmile5とSENSACIONの2社で、FC5ブランドとオリジナル5ブランドを展開されています。スタートは「鳥貴族」だったと伺っています。
藤井 03年に鳥貴族に加盟し、06年にSENSACIONを設立しました。もともと主人が鳥貴族の某加盟店のスタッフとして働いており、そこから外部独立し、個人で3年間運営した後に法人化しました。
──鳥貴族は現在、国内約650店舗(うち直営約400店舗)を展開していますが、加盟者はわずか17社です。鳥貴族の社員が独立する内部独立は耳にしますが、貴社のような外部独立は珍しい例ではないでしょうか。
藤井 現在、鳥貴族は外部からのFCは受け入れておらず、独立がすごく難しくなっています。内部独立された方はいますが、FCオーナーから独立したのは主人だけです。加盟店のスタッフとして働いていた際、鳥貴族の大倉忠司社長に目をかけていただき、独立に至りました。
──その後、しばらく鳥貴族で出店拡大されてきましたが、15年に「乃が美はなれ」に加盟されました。鳥貴族に一本化せず、複数ブランドの運営を決めた理由を教えてください。
藤井 鳥貴族に携わって10年超が経過し、今後の事業拡大と多角経営によるリスクヘッジを検討するようになりました。その時に、ご紹介いただいたのが乃が美でした。当時、乃が美はなれは1店舗しかありませんでしたが、ご縁があってFC加盟することができました。
──御社の加盟するFCはすべて飲食業態です。コロナ禍は苦労されたのではないでしょうか。
藤井 これまで赤字決算になったことはなく順調でしたが、コロナで初めて業績が落ち、20年は鳥貴族がメインの SENSACIONが赤字となりました。鳥貴族はほぼ営業できず、従業員の仕事がなくなるくらいでした。そのため、従業員の働き口を確保するべく、一時的ですがデリバリー業態にも加盟しました。コロナ禍は本当に大変でしたが、乃が美が絶好調のタイミングだったため、Smile5はコロナ禍でも黒字でした。
──リスクヘッジが上手く機能しましたね。
藤井 乃が美はブーム時の売上も好調で、またコロナ禍においても製造小売業という業態の特性から営業を継続することができ、大変助かりました。現在は店舗数も減少しておりますが、当時を振り返ると、乃が美の店舗運営を通じて得られた経験や機会には、今でも深く感謝しています。
──ピーク時の17店舗からだいぶ減らされましたが、現在の7店舗も閉店を検討されていますか。
藤井 その時々の情勢にもよりますが、根強いファンの方もおられるので、期待に応えるべく最善を尽くしていきたいと考えています。現在は有難いことに鳥貴族とゴンチャの業績が上がってきており、多角化の恩恵を受けています。

「鳥貴族」は現在15店舗を運営
コロナ直前にゴンチャ加盟 客層や雇用率を重視
──鳥貴族は22年から今年にかけて4年連続で値上げを実施していますが、その影響はなかったのでしょうか。
藤井 そうですね。好調なのは値上げによる売上アップよりも、コロナ後にエリアが拡大し、広島と島根エリアを展開できるようになったことが大きいと思います。現在は15店舗を展開しており、1店舗あたりの月商は約1000万円となっています。
──ゴンチャはコロナ禍で出店されたそうですね。何が加盟の決め手になったのですか。
藤井 大阪の天王寺にゴンチャができた時、飲みにいったら非常に美味しかったんです。娘としょっちゅう通っていたのですが、そのうちにやりたいと思うようになりました。また、お客様層や雇用率の高さなども重視し、加盟に至りました。
──オープン後の状況は。
藤井 1店舗目は19年6月に名古屋の商業施設に出店しました。良い物件をいただけて、オープン時は100~200人の大行列ができるほどでした。半年後にコロナが来ましたが、それでもデリバリー売上が約200万円に上り、月商は1500万円に達しました。コロナ禍の2~3年は日本でトップレベルの売上でした。

コロナ禍で救世主的存在となった「乃が美」
従業員が働きたくなる魅力ある企業へ
人手不足の今、人材採用に苦労するフランチャイジーが増えている。飲食店を多数展開する同社も例外ではない。そうした中で、同社は労働環境の改善やコンプライアンスの遵守に取り組み、会社自体の魅力を上げることで人材確保に繋げる。また、店長やマネージャーといったポジションアップが従業員のモチベーションになっていることから、今後も複数ブランドによる出店拡大に注力する方針だ。

オリジナル業態の1つ「Shirley pop」が好調
10年先を見据えた出店現地に赴き街を知る
──御社の運営エリアは広範囲に跨りますが、エリアによってお客さんの反響は変わりますか。
藤井 鳥貴族は関東よりは確実に受け入れられていると思います。大阪はコスパが絶対的に重視されるので、値段と商品のバランスが取れているブランドは受け入れられやすいです。
一方、大阪で上手くいかなかったのは「焼肉ライク」です。東京では流行りますが、大阪には焼肉文化があります。安くて美味しい焼肉店が多数ある中、ライクはお手頃感が薄く、次第にニーズがなくなっていきました。
──では、出店の際に重要視するのはコスパですか。
藤井 グループ全体のコンセプトは5年、10年先を見据えた出店です。FLR比率や地域への貢献度などを重要視します。そのため、今でも出店の際は現地を見に行きます。朝から晩まで歩いて、物件を探したり、平日や休日、昼や夜の人の流れなどを見ます。江東区を一周したこともあります(笑)。こうして街を知り、地元の方に受け入れられるブランドを探り、5年、10年続く商売で出店します。
──現在は複数ブランドによる出店拡大をされていますが、創業当初から多店舗展開は視野に入れていたのでしょうか。
藤井 はい、店舗展開をしていかないとスタッフが付いてこないので。スタッフが何を目標に働いてくれるかというと、店長やマネージャーなど上のポジションに就くことです。増店しなければポジションを作れないため、従業員満足度を上げるためにも増店は止められません。

若年層から熱い支持を受ける「ゴンチャ」
労働環境を整備改善 女性活躍も推進
───人材採用は順調ですか。
藤井 苦労しています。社内の人事担当がコスト管理のもと広告求人を出しているのですが、居酒屋業態は不人気でなかなか人が集まりません。アルコールを扱う業態になると夜間営業もありますし、お客様の質も変わってくるので避けられがちになるのだと思います。一方、ゴンチャはアルバイトに困ったことがないくらい人気です。求人にお金を使うことはほとんどなく、基本は月額求人サービスと既存スタッフの紹介で成り立っています。このように、採用はブランドごとに差があるのを感じます。
──採用が難しいブランドに関して、何か対策は練っていますか。
藤井 練ってはいますが、これといったものはないですね。ただ、最近は外国人採用を行っており、今ではトータルで30人ほどの外国人社員を雇用しています。ゴンチャは人が足りているので外国人スタッフはいませんが、そのほかの業態では外国人スタッフも活躍しており、中には店長候補もいます。
また、グループで色んなブランドを展開している強みを生かして、グループ全体での採用や異動なども試みていますが、それでも苦戦しています。
──労働環境はどのように整備されてきましたか。
藤井 労務面やコンプライアンスを含めて、会社を良くしていこうと日々努力しています。専門の講師を招いてコンプライアンスについて学んだり、労務面に関してもオーバーワークにならないように、各マネージャーに労働時間を超過している人を報告してもらい、事務所で弾くようにしています。
また、最近は評価制度も刷新しました。これまでは私たちの基準で査定していましたが、規模が大きくなってきたこともあり、より公正な評価をするため、外部の評価システムを取り入れました。
──藤井社長もそうですが、御社は女性が活躍されている印象です。
藤井 私自身女性ということもあり、当社では女性がもっと活躍できる社会を目指して取り組んでいます。女性で重要なポジションに就いている方も多く、現在グループ全体で34店舗あるうち6店舗が女性店長となっており、女性マネージャーは3人います。
──人手不足が叫ばれる今、オペレーションの省人化も課題となります。
藤井 その点、ゴンチャはどこのブランドよりもデジタル化が進んでいます。注文はキオスク端末やモバイルオーダーでできるようになり、その分、お渡しの際の接客に注力できるようになりました。今後もデジタル化によって人を減らしつつも、人の価値を上げるようなブランドになると期待しています。

従業員の満足度向上に注力
会社のファン獲得で永遠の会社を目指す
同社が目指すのは100年、200年続く「永遠の会社」。これを実現させるため、今後は地域貢献と次世代の経営者輩出に取り組む。現在は、職場体験やゴミ拾いなどを通じて地域住民との交流を行っており、今後は地域のあらゆる層に受け入れられるようブランド展開を図っていく。将来はホールディングス化を図り、100億円企業を目指す。
LTVを高めるブランドを検討 地域活性化への取り組み
──今後の成長戦略を教えてください。
藤井 私たちはグループで34店舗の飲食店を運営しているので、今後は消費者のLTVをどう囲っていくかを重要視していきます。当グループへの最初の入り口がゴンチャだとしたら、次にご利用いただくのは鳥貴族かもしれません。しかし、現在は若年層向けのブランドが多いため、次は中高年層も使っていただけるような業態を検討しています。地域に色んなブランドを取り入れることでLTVを高めるとともに、地域活性化に繋げ、ゆくゆくは地域貢献する企業を目指していきたいと思います。
──現在も地域貢献に関する取り組みをされていますか。
藤井 学生の職業体験や就活生のインターンの受け入れを行っています。ブランドの魅力や地元の良さを伝えており、この体験を通して地元で働く方が出れば、多少なりとも貢献できるのではないかと思います。
また、大阪でプラスチックカップのポイ捨て問題があったため、本社の人間で地域のごみ拾いに参加しています。ごみ拾いは地元の方とコミュニケーションがとれる貴重な機会にもなっています。
──地域の方との交流を大事にされているのですね。
藤井 こうして会社のファンを作っていけたらと思います。地域の方はもちろんですが、一番のファンは従業員であってほしいです。私たちのルーツは鳥貴族加盟店のスタッフです。そこから独立して経営者となりました。このことから、社員にもサラリーマンからビジネスマンへと成長してもらい、経営陣に入る。あるいは、独立して社長となり、活躍して欲しいと考えています。経営者を輩出してホールディングス化を図り、将来的には100億円企業を実現させたいです。
──御社はFCのほか、オリジナル業態を5ブランド展開されています。
藤井 いずれは本部にもなりたいと思い、オリジナルブランドを開発してきました。色々やってきましたが成功するのは難しく、フランチャイジーとしてやってもらえるようなレベルに達するものはなかなか生まれませんでした。しかし、最近は焼きたてチーズケーキ専門店「Shirley pop」が好調なので、いつかFC化できたらと思います。

職場体験の受け入れ
会社概要
Smile5/SENSACION
代表者 藤井清美/藤井隆史
所在地 大阪市天王寺区
設 立 2016年7月/2006年4月
資本金 900万円/1000万円
売上高 8億4638万円/14億9253万円(2024年6月現在)
従業員数 約350名/約500名(パート・アルバイトを含む)
加盟ブランド 乃が美はなれ・焼肉ライク・ゴンチャ鳥貴族・福包酒場
藤井 清美社長(50)
Profile◉ふじい・きよみ
1974年10月生まれ。大阪府大阪市出身。短期大学卒業卒業後、東映株式会社入社。1998年に友人と不動産会社を設立。2003年、鳥貴族FCに加盟し、2006年に株式会社SENSACIONを藤井隆史氏が設立し、同社取締役に就任。 2015年、Smile5株式会社を設立。同社代表取締役に就任。
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